隠されるウイグル強制収容所 取材敢行も門前払い 用途変更・閉鎖された施設も

AFPBBNews 2023年10月14日 19:00

【10月14日 AFP】中国北西部新疆ウイグル自治区(Xinjiang Uighur Autonomous Region)にある刑事施設は、以前は中国政府が設置していた強制収容所の一つだった。取材班が訪れると、セキュリティーゲートの警察官に門前払いされた。

2017年以降、100万人以上のウイグル人をはじめとするイスラム教徒が、人権侵害が常態化している強制収容施設に入れられたと、研究者や運動家、離散民グループは指摘する。

しかし、中国政府は、そうした施設は単なる職業訓練所だと主張。入所者は「卒業」して既に安定した雇用とより良い生活を手にしており、施設は数年前に閉鎖されたと説明している。

こうした強制収容施設について、地域の状況に詳しい専門家は、閉鎖された施設もあるが、一部は改修されて別の用途を持つ施設になっていると指摘する。

カナダのサイモンフレーザー大学(Simon Fraser University)の助教で新疆ウイグル自治区における収容問題を専攻するダレン・バイラ―(Darren Byler)氏は、「被収容者のうち数十万人は、厳しい監視体制が敷かれた工業団地での労働に従事させられている可能性が高く、それ以外にも名称や使途が改変された施設に収容されている」と述べた。

7月、AFPの取材班は新疆ウイグル自治区の施設26か所への訪問を敢行した。オーストラリア戦略政策研究所(Australian Strategic Policy Institute、ASPI)の研究報告に掲載されていた情報を手掛かりにした。

施設の多くは人里離れた場所に設置されており、そのうちのいくつかは広大な敷地を有し、周囲は高さ5メートルの壁に囲まれていた。その上には有刺鉄線が張り巡らされ、監視塔も据えられている。一方で、放置されている施設もあった。

西側諸国政府から一部資金提供を受けているシンクタンクのASPIは、衛星画像や公文書、その他の情報を用いて、ウイグル自治区の強制収容施設を特定した。

中国政府は、真実ではないとASPIの調査結果を否定している。

ASPIによると、アルトゥシュ(Artux)周辺には少なくとも8施設ある。そのうちの一つは2017年に建設され、その翌年に増設されている。これがAFP取材班が門前払いされた施設だ。

取材班は、セキュリティーゲートで警察官に止められた。施設へのアクセス許可を求めると、「ここは刑務所だ。中には絶対に入れない」と拒否された。「写真や動画の撮影も許されない」。丁寧だが毅然(きぜん)とした口調だった。被収容者についての質問に、答えはなかった。

中国公安部のエンブレムが掲げられたゲートの向こうには、砂漠に延びる道路と、その先にある複数の建物が見えた。

閉鎖や用途変更

取材班が確認した施設のうち、10か所については、駐在スタッフや周囲のセキュリティー状況から、現在も使用されているものと見受けられた。

一方、既に使用されていないとみられる収容施設も5か所あった。そのうちの一つはカシュガル(Kashgar)から車で約1時間の距離にあり、よくある団地のようだった。

敷地内には似たような建物が並び、その間には、崩れかけた高さ3メートルの壁があった。

ASPIのデータによると、壁は敷地内の4区画を仕切る形で2017年に設置された。区画内には収容施設とおぼしき新しい建物が建てられ、アクセスするには厳重に警備されたエントランスを通る必要があった。

ASPIが収集した情報からは、ここの警備設備が撤去されたのは2019年以降だったことが確認できた。

カシュガルから南西方向に1時間ほど車を走らせると、2棟の建物が道路を挟むようにして建っていた。ここは、用途が変わったとみられる収容施設7か所のうちの一つだ。

対になった建物はそれぞれ鉄のフェンスで囲まれ、渡り廊下で接続されていた。

ASPIによると、ここには「コナシェヘル-6(Konasheher-6)」と呼ばれる再教育施設が入っていたが、2019年に建物の使用目的が変わっている。

低層のピンクと黄色の建物は、ごく一般的な学校校舎のようにも見える。隣接する運動場はきちんと整備されており、サッカー場や陸上トラック、バスケットボールコート、バレーボールコート、卓球台などが用意されていた。

「中国の夢を実現するために…一生懸命勉強しよう」と、生徒に向けたスローガンも掲げられていた。習近平(Xi Jinping)国家主席は、この「中国の夢」という言葉を好んで使う。

用途変更が行われた施設としては、学校以外に、中国共産党幹部のためのトレーニングセンターといったものもあった。

カシュガルのすぐ目と鼻の先にも施設は存在している。同市から南東にわずか数キロ。上部に電柵が張り巡らされた高さ5メートルの塀があった。

隣接する静かな農村を見下ろすように設置された塀の外側には、工事現場から出たがれきが高く積み上げられている。一方、入り口ゲートから見える塀の内側には、整備された庭と建物が複数あった。

警備員は、ここがかつて収容所だったことを認めた。しかし、「中にいた人はみんないなくなった」と話した。(c)AFP/Matthew WALSH

https://www.afpbb.com/articles/-/3481653

在日ウイグル人証言録

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