ポルシェなど数千台、米国で輸入停止

ポルシェなど数千台、米国で輸入停止
使用部品に強制労働の疑い

日経ESG 2024.04.22

フォルクスワーゲングループの自動車数千台が米国で輸入差し止めとなった。サプライチェーンの末端で中国西部製の部品が採用されていた。

ドイツの自動車メーカー大手であるフォルクスワーゲングループの自動車数千台が、米国の港で押収された。「ウイグル強制労働防止法」に違反する中国製部品をフォルクスワーゲンのサプライヤーが発見したことを受けたものだ。押収されたのは、フォルクスワーゲン傘下で独高級車のポルシェ、英高級車ベントレー、独高級車アウディの車両だった。

この問題に詳しい複数の関係者によると、フォルクスワーゲンは「中国西部」から調達したことが判明した電子部品を交換するため、納車を最大で2024年3月末まで延期したという。

同関係者は、部品はサプライチェーンの下流にある間接的な取引先から調達されたものであり、サプライヤーがこの問題についてフォルクスワーゲン側に警告するまで、同社は部品の調達先について把握していなかったと強調した。フォルクスワーゲンは部品の調達先の報告を受けてすぐに米当局に届け出たと言う。

フォルクスワーゲングループと上海汽車集団の合弁会社である上海フォルクスワーゲンのウルムチにある工場。写真は13年稼働開始時のもの(写真:Visual China Group (Getty Images))

強制労働品の輸入を禁止

米中関係は、1979年の国交樹立以来の最悪の状態に陥ったままだ。しかし、2023年11月にサンフランシスコで米国のバイデン大統領と中国の習近平国家主席が首脳会談を開催して以降、両国政府は関係の安定化を図ってきた。

米国は、21年に制定したウイグル強制労働防止法の下、中国西部の新疆ウイグル自治区などの地域で強制労働によって製造された物品の輸入を禁止している。

ただし、先の関係者は、問題の部品がまさに同自治区で製造されたものかどうかについて確認しようとはしていない。

押収の詳細な説明を受けた関係者によると、押収されたのはポルシェのスポーツカーと多目的スポーツ車(SUV)約千台のほか、ベントレー数百台、アウディ数千台だという。

フォルクスワーゲンは「強制労働の疑いを含め、社内およびサプライチェーン内における人権侵害の申し立てについて、非常に重く受け止めている」との声明を発表した。

さらに「当社は、下請けの取引先に関する疑いの情報を入手して以来、問題を調査してきた。事実を明らかにし、適切な措置を講じていく。調査によって重大な違反が確認された場合には、サプライヤー関係の解消という措置が含まれる可能性もある」と付け加えた。

中国のサプライチェーンで判明した強制労働に関する疑義は、フォルクスワーゲンにとって特にデリケートな問題と言える。フォルクスワーゲンが新疆ウイグル自治区の区都ウルムチで共同所有する工場に対して、人権団体からも投資家からも圧力が高まっているためだ。


ドイツメディアが新たな強制労働疑惑を報道したことから、フォルクスワーゲンは24年2月14日、新疆ウイグル自治区での「事業の将来的方向性」について、合弁パートナーである中国の上海汽車集団(SAIC)と意見を交わす予定だと発表した。

中国当局者は、同自治区における労働プログラムは雇用に役立っていると擁護する。一方で、国連の最高人権機関は、中国の行動は「人道に対する犯罪」にあたる可能性があると指摘している。

国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチは24年2月に発表した報告書内で、自動車メーカーは新疆ウイグル自治区における強制労働の被害者が製造したアルミを購入してしまうリスクがあると警告した。

米中の政治的緊張が高まる中、フォルクスワーゲンは中国における売り上げ減少と米国で存在感を向上させたいという欲求のバランスを取ろうとしている。

高まる供給網管理の必要性

事情に詳しい複数の関係者によれば、フォルクスワーゲンは24年1月中旬、北米向け高級車の一部に、米国の関税規則に準拠しない部品が含まれていたことを発見した。部品はサプライチェーン下流の取引先から調達されたもので、フォルクスワーゲンが直接調達したものではなかったという。一般的に、自動車メーカーが直接取引するのは最大手のサプライヤーだ。サプライチェーンの下流にあるその他の企業によって製造された、より細かい部品の調達先については、認識していないケースもある。

フォルクスワーゲンが納車を待つ顧客に宛てた書簡では、原因として「より大きな制御ユニットを構成する小さな電子部品」を挙げ、同部品を「取り換える」としている。ただし、部品の調達先については明らかにしていない。

関係者は、フォルクスワーゲンは米関税当局の認可を得て交換用電子モジュールを発注しており、車両の修理もすでに開始したという。2月上旬に一部車両の修理が完了したが、少なくとも3月までに未処理分が解消される見通しは立ってない。

修理過程に詳しい関係者によると、モジュールの交換は比較的単純で、車両解体の必要はない。しかし一部の複雑な車種では、修理に数時間を要する可能性があるという。

Peter Campbell in London, Demetri Sevastopulo in Washington and Patricia Nilsson in Frankfurt Additional reporting by Edward White in Shanghai ©Financial Times Ltd. 2024 Feb. 15

https://project.nikkeibp.co.jp/ESG/atcl/column/00005/040900444/

在日ウイグル人証言録

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