ウイグル料理店でウイグルジェノサイドを知る
- 2023/6/30
- ウイグル情勢
人権TODAY|TBSラジオ 2023.06.25日曜日15:00
じゃんけんに勝つとサービス
千葉県松戸市にある飲食店「ローズジャンケンケバブ」。店の名前に「ジャンケン」が入っているように、店員とじゃんけんをして、客が勝つとケバブが大盛りになるサービスが人気です。もともと移動販売から始まり、2017年に新松戸で開店。今年3月には2店目の八柱店がオープンしました。
店主はハリマト・ローズさん(49)。なぜ、じゃんけんサービスを始めたのでしょうか。
人は、どういう時に物を食べたら美味しく感じるか分かりますか。楽しい時とか気分がいい時は、何を食べても美味しく感じる。でも仕事から帰ってくる人は疲れちゃってるから、あまりおいしく感じないよね。だから、まずは彼たちの気分をもうちょっと楽にする、楽しくさせるためにジャンケンを始めた。
店のメニューは、ゲバブや串焼き、ローストチキンにインドカレーもありますが、なんといってもメインは「東トルキスタン」の料理です。東トルキスタンというのは、今は中国の一部となっている「新疆ウイグル自治区」のこと。ニンジンの炊き込みご飯「ポーロ」や、うどんのような麺料理「ラグマン」、水餃子の入ったスープ「チョチョレ」などがあります。店主のローズさんの故郷・ウイグルの味を楽しめるお店です。ハラル認証の食材を使っていて、イスラム教の人でも利用できます。
ウイグルで起きていることを知ってほしい
そのウイグルをめぐっては、近年良くないニュースが報じられています。
日本ウイグル協会によると、2017年以降およそ300万人のウイグル人が、ウイグル人というだけで中国政府によって捕まえられ、施設に強制収容されています。外部との接触を完全に断ち切った劣悪な環境の中で、ウイグル語での日常会話の禁止、中国共産党への忠誠を強要されているといいます。さらには、肉体的・精神的な拷問、性的虐待、強制不妊手術、強制労働、薬の投与などの人体実験も横行しているそうです。国連人権高等弁務官事務所もウイグル人に対して虐待や拷問などが行われてきたことを指摘する報告書を2022年に公表しています。しかし、中国政府はこうしたことを否定しています。
アメリカ政府とかヨーロッパ議会とか全部「ジェノサイド」と認定しました。つまり「虐殺」だと。このことを今みんなに聞いたら、小説の話だと思うのではないか。しかし小説じゃなくて、今21世紀の2023年に起きていることなんですよ。人権として考えられないことが起きている。
日本には2000~3000人のウイグル人がいて、そのほとんどが2017年以降、故郷の家族と連絡を取ることができないそうです。ローズさんもウイグル出身。決して他人事ではなく、自身の家族や親戚も捕まるようになってしまった。日本からかける電話もつながらず、生きているかどうかもわからないといいます。故郷の家族を人質に、中国の警察がスパイ行為の強制や脅迫電話を当たり前のように仕掛けていて、ローズさんにも不審な電話があったそうです。そしてローズさんは、ほぼ10年ウイグルに帰っていないそうですが、帰れば収容所行きの運命も待ち受けています。自分の故郷、自分の仲間が今どんな目に遭っているのか、そんなウイグルの現状を多くの日本人に知ってもらいたいと、ローズさんは「皆の力でウイグルジェノサイドを終わらせよう!」と全国で街頭活動を行っています。また、母国の言葉を忘れてはいけないと、ウイグル語の教室も携わっているそうです。
お店のテーブルにメニューが置いてありますが、その一番後ろにウイグルについての説明が載っていました。料理を待つ間にウイグルについて知ることができます。そして、店主ハリマト・ローズさんの「夢」も書かれています。ぜひウイグル料理とともに、ウイグルについて学んでみてはいかがでしょうか。
(TBSラジオ「人権TODAY」担当:進藤誠人)
■取材協力
ローズジャンケンケバブ
・八柱店 (新京成線 八柱駅 駅ビル1F)
・新松戸本店 (JR常磐線・武蔵野線 新松戸駅 駅前)
日本ウイグル協会 (https://uyghur-j.org)