ウイグル料理囲み 人権問題に思いを 松戸のケバブ店主

朝日新聞 近藤咲子2023年6月1日 10時45分

中国北西部の新疆ウイグル自治区出身の男性が営むケバブ店が、千葉県松戸市のJR新八柱駅前にある。ウイグルでは国連で深刻な人権侵害が指摘されており、4月の衆院補欠選挙で初当選した英利アルフィヤ氏のルーツとしても注目された。男性は料理を通じ故郷の現状を知って欲しいとの思いを抱きながら厨房(ちゅうぼう)に立つ。

「ローズジャンケンケバブ 八柱店」。厨房で、店主のハリマト・ローズさん(49)が大きな鍋をかき混ぜていた。3月に開いたばかりの店ではケバブやカレーのほか、ローズさんの故郷の料理をふるまう。

人気メニューのひとつがラム肉とニンジンの炊き込みごはん「ポロ」だ。調味料は塩だけのシンプルな味付けだが、骨付きのラム肉を炊いてだしを取り、ニンジンは甘みの強い徳島県産を使うなどこだわりが詰まっている。ウイグルでは来客時や結婚式などにもふるまわれる料理だという。

ローズさんは「ウイグルのご飯を食べて、ウイグルの文化やウイグル人がどんな人かを知ってもらいたい」と話す。店をきっかけに人権侵害が指摘されるふるさとの現状を知ってくれたら、とも願う。

アフガニスタン、インド、パキスタンなどと国境を接する自治区には、ウイグル人をはじめカザフ人、キルギス人など多数の民族が暮らすが、中国政府から経済的・文化的な差別を受けていると指摘されてきた。

ローズさんも故郷にはもう10年ほど戻っていない。

大学院で建設工学を学ぶためにローズさんは2005年に来日。修士号を取得後12年に戻ったウイグルでは、中心都市のウルムチで09年に当局への抗議デモをきっかけに起きた死傷者多数の騒乱以降、差別がさらに深刻化していた。

行く先々で、理由もなく、警察から身体検査を受けた。バスから自分だけ降ろされたり、出張先のホテルで夜中にたたき起こされて部屋を調べられたりしたという。兄の忠告を受け、翌年には妻と子どもを連れて再び日本に渡った。

日本に戻ってからは、松戸市の新松戸駅前にウイグル料理を出す店を17年に開店。今は新八柱の店と2店舗を経営するかたわら、日本ウイグル協会の副会長として人権問題やウイグル文化について発信する。

迫害を恐れて現地の家族とは連絡もままならず、高齢の母は「生きているかどうかも分からない」という。20年5月には、自治区に住む兄から不自然なテレビ電話があり、兄の隣にいた男性から日本ウイグル協会の活動について聞かれたこともあったという。「私も、もし中国に残っていたら、今頃、強制収容所に入れられていたかもしれない」

4月の5区補選で当選した英利氏の両親は、ウイグル出身。英利氏は元国連職員として、人権問題も担当してきた。英利氏は立候補時の会見で、「日本の人権外交のなかで、ウイグル問題にもしっかり取り組みたい」と語っていた。ローズさんは「国連で働いた経験を生かして問題解決に取り組んでほしい」と期待を寄せている。

「人権問題は全世界の問題。ウイグルゆかりの人だけでなく、人として誰もが取り組まなければならない。虐殺に目をつぶったら社会が壊れてしまう。問題について知り、多くの人に立ち上がってほしい」(近藤咲子)

〈ウイグル問題〉新疆ウイグル自治区で、中国政府による深刻な人権侵害が起きているとされる問題。昨年8月に発表された国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)の報告書では、少数民族が強制収容されていると米欧が指摘してきた「教育訓練」を掲げる施設で、虐待や拷問があった可能性を認めた。自由を奪われている人々の解放や、行方不明者に関する調査など13項目を勧告した。

https://www.asahi.com/articles/ASR507DS5R52UDCB00P.html

在日ウイグル人証言録

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