ウイグル人弾圧 G7は対中圧力で結束を
- 2023/5/19
- ウイグル情勢
産経新聞 2023/5/19 05:00
米国務省が「信教の自由」に関する国・地域別の報告書を公表し、中国政府による人権侵害を厳しく指弾した。新疆ウイグル自治区のイスラム教徒少数民族ウイグル人らに対する「ジェノサイド(集団殺害)や人道に対する罪」が続いていると指摘している。
信教の自由をはじめとする人権は誰もが享受すべき権利である。普遍的な権利の侵害は容認できない。先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)で、ウイグル弾圧を許さないという強いメッセージを出すべきだ。
特にG7議長を務める岸田文雄首相の責任は大きい。日本は米欧と比べて対応が手ぬるいと言わざるを得ない。G7の場で人権重視の外交姿勢を示してほしい。
報告書は、中国ではほかにもキリスト教徒やチベット仏教徒らが弾圧を受けているとし、不当な拘束や拷問、思想改造、宗教儀式の妨害などがあると指摘した。
イランやミャンマーなどでの人権侵害も取り上げているが、国務省高官は記者団に「中国は、人権と信仰の自由を侵害している最悪の国のひとつ」と批判した。
中国の問題を封じるべきなのは経済的な影響力と相まって人権を無視する強権的な統治手法が途上国などに拡散する恐れがあるからだ。中国企業がウイグル人の監視に使う顔認証のデジタル技術は、南米やアフリカなど60カ国以上に輸出されたことが米研究機関などにより明らかにされている。
サミットでは「グローバルサウス」とされる新興・途上国との連携も重要なテーマである。途上国の健全な発展を支えるためにも、G7は結束して中国の人権侵害に対(たい)峙(じ)しなければならない。
問題は日本の対応だ。米国のウイグル強制労働防止法で新疆ウイグル自治区からの物品輸入が原則禁止とされるなど、米欧は強硬姿勢を強めている。日本ウイグル協会の代表らは日本政府に、人権侵害に悪用されかねない技術の輸出規制と人権侵害に関与した人物や団体に制裁を科す法の制定を訴えている。日本もウイグル人を支える具体的な対応を示すべきだ。
人権侵害を巡っては、公開処刑や言論弾圧などにみられる北朝鮮の深刻な状況も取り上げるべきだ。拉致問題の解決と併せてG7の強い決意を世界に発信できるよう、岸田首相は議論を主導しなければならない。