「ウイグル」に対する驚くべき冷酷・非情さ 元東京大学史料編纂所教授・酒井信彦

産経新聞 2022/1/9

中国の著名な女性テニス選手である彭帥(ほう・すい)さんが、中国の最高指導部メンバーであった人物との不倫関係を告発して、国際的に大きな話題になった。テニス選手が告発後に行方不明になったことで、北京冬季五輪のボイコット問題も関連して、日本の新聞にも多くの記事が見られた。日頃中国に忖度(そんたく)する朝日新聞ですら、昨年11月25日の社説「中国選手『失踪』 うやむやは許されない」では、珍しく中国を厳しく批判している。その後この問題は、本人の健在を示す写真や音声などが出てきたが、現時点で、真実は不明確なままである。

ところで、米国のバイデン大統領は、昨年12月6日、北京冬季五輪に対して、「外交ボイコット」をすることを正式に表明した。モスクワ五輪とは異なって、選手は参加できても、政府首脳などは参加しないわけである。その根拠として挙げられたのは、新疆ウイグル自治区や香港での人権弾圧である。つまりボイコットの理由は、テニス選手の行方不明とは全く次元が異なる、極めて重大な問題なのである。

人間の行方不明問題といえば、まさにウイグル自治区にこそ、英国の独立民衆法廷が「ジェノサイド(民族大量虐殺)状態」と認定するほどの大量の行方不明問題が存在する。昨年12月19日放送のNHKスペシャル、シリーズ中国新世紀の5回目「〝多民族国家〟の葛藤 ウイグル自治区のいま 監視と収容の実態は?」では、近親者との連絡ができなくなった、在日ウイグル人男性の証言が、詳しく紹介されていた。

ウイグルで深刻な人権問題が存在することは、はるか以前からウイグル人が、熱心に訴え続けてきたことである。知られていなかったのは、日本の多くのメディアが、この重大な問題を無視してきたからにすぎない。番組を放送したNHKも、今後この問題をどれだけ継続して報道するか分からない。

しかし今回の彭帥さん問題によって、日本において中国の人権問題に関する報道が、いかにゆがんで不正確なものであることかが、明白に証明されたのは間違いない。膨大に存在するウイグル人の人権より一テニス選手の人権を尊重したのであるから、これは途方もない差別であると言わなければならず、メディアのウイグル人に対する、冷酷・非情さは、驚くべきものである。つまりメディアのインチキ・リベラルの正体が暴露されたのであるが、当のメディアはどこまでそれに気がついているのだろうか。

https://www.sankei.com/article/20220109-QQM3IAGOTBOZLCCNWDDKNAXH2I/

在日ウイグル人証言録

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