資源の強奪


 東トルキスタンは資源が豊富な地であり、これが中国がこの地を手放さない理由でもある。
 気温の高低差が激しく、乾燥しているという典型的な内陸性気候であり、厳しい自然環境であるが、農産物が豊富である。高山の雪解け水を利用した耕地は肥沃であり、多くの種類の果物とその質の良さで世界的に有名であり、「果物の故郷」とも呼ばれる。広大な草原による畜産品も豊富である。家畜や栽培植物の他にも、野生動物や植物の種類も豊富であり、野生動物は五八〇種類、野生植物は三〇〇〇種類以上も生息している。
 鉱物資源としては、金属資源や宝石なども豊富であるが、それ以上に石炭、石油、天然ガスなどのエネルギー資源が中国にとって重要視されている。エネルギー資源の中国全体の推定埋蔵量に占めるこの地域の推定埋蔵量は、石油、天然ガス、石炭がそれぞれ一/四、一/三、一/三にもなっている。これらエネルギー資源は化石燃料資源でもあり、生物の遺骸が集積したものが資源となるため、タリム盆地、ジュンガル盆地と大規模な堆積盆地をもつ東トルキスタンは、今後も大規模な石油・ガス田が発見される可能性を秘めている。
 このように豊かな資源があるにも関わらず、現地の人々へもたらされる恩恵は微々たる物である。
 ウイグル農民は年に三ヶ月以上の義務労働が課せられ、その労働期間の必要経費は自己負担で、農繁期に厳しい肉体労働を中国のためにしなければならない。さらに綿花などの付加価値の高い農産物を植えさせられ、安い値段で買い取られている。農家が植えても良い作物は当局によって管理されている。
 また、自分達の足元に埋まっているエネルギー資源は、独占的に漢族によって開発され、「西気東輸」として、パイプライン、鉄道によって中国沿岸部へと運ばれている。そのため、東トルキスタンでのガソリン代は、中国沿岸部よりもむしろ高くなっている。
 一九五〇年代からはじまった大躍進時代~文化大革命期に、東トルキスタンの社会主義改造、つまりは中央への経済統合が進められていった。もともとの東トルキスタンの人々の土地は政府に取り上げられ、農業の集団化、産業の国有化が推進されていった。
 このときに重要な役割を果たしたのが「生産建設兵団」である。もともとは東トルキスタンに侵入してきた人民解放軍の退役軍人を主力としたものであり、構成人員のほとんど全員が漢族である。生産建設兵団は共産党と軍隊、企業とが一体となった組織であり、国からは農地開墾と国境警備の責任が与えられてきた。その圧倒的な権力をもとにして、東トルキスタンの最も肥沃な耕地や放牧地を占拠し、貴重な水資源を支配して富を築いてきた。そして東トルキスタンの住民が、漢族の横暴に異議を唱えるときには、分離運動としてこれを弾圧する役割も果たしているのである。生産建設兵団は今でも総数二五〇万の兵団であり、有事の際には直ちに戦力として機能する屯田兵としてその力を誇示し、巨大な経済力を維持している。