日本ウイグル協会会長「アジアにおける民主主義の勝利」台湾の総統選
- 2024/1/16
- ウイグル情勢
13日に投開票された台湾の総統選は中国の統一圧力に屈しない姿勢を示す与党・民進党(民主進歩党)の頼清徳副総統が勝利した。台湾と同じく中国共産党の圧力に直面している新疆ウイグル自治区出身で日本ウイグル協会のレテプ・アフメット会長は、産経新聞の取材に応じ、総統選の結果について「民主主義の価値観は独裁国家に負けないことが示された。台湾の総統選はアジアにおける民主主義の勝利だ」と祝意を表した。主な内容は以下の通り
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台湾の人々は非常に賢明な選択をされたと思う。まずは総統選に勝利した頼清徳氏にお祝いをしたい。
今回の選挙は中国の習近平政権に大きく三つのメッセージを突き付けているといえる。
一つは「香港と同じ道を歩みたくない」という台湾の人々のメッセージだ。香港では2020年6月に国家安全維持法(国安法)が施行され、高度な自治が認められた「一国二制度」は形骸化してしまった。
二番目は「中国共産党は信用ならない」というメッセージだ。中国共産党は好き勝手に台湾を操れると勘違いしている。「統一すれば豊かになる」「統一のためには武力行使も辞さない」など揺さぶりをかけてきたが、台湾の人々は動じなかった。民主主義の価値観を捨てないと拒否反応を示したといえる。
(新疆ウイグル自治区で暮らす)ウイグル人を巡っても中国共産党は「幸せに暮らしている。強制収容政策を批判するのはごく一部だ」などと海外メディアにプロパガンダ(政治宣伝)をしている。それはウイグル人に自由な意思表示する機会がないからだ。それが得られれば「中国共産党は必要ない」という結果を突き付けるだろう。
民主主義は負けない
三番目は「いくら相手が強くても、あきらめない」というメッセージだ。中国の経済力や軍事力が強大であっても、民主主義の価値観は独裁国家に負けないという希望になった。
中国共産党が恐れたのは、台湾の独立に加え、ウイグル人を含め中国国内で「台湾のように自分たちのことは自分たちで決められる」といった意見が出ることだった。中国国内で台湾総統選について「独立派や欧米が干渉した」といった方向に人々の関心をそらしており、台湾の人々が自由な選挙で自らの政権を選んだという側面を伝えていない。
台湾の総統選はアジアにおける民主主義の勝利といっていい。中国寄りの最大野党・国民党が政権を取れば、香港と同じような道に進んでしまいかねなかった。日本も周辺を中国、ロシア、北朝鮮など独裁国家に囲まれている。台湾が香港と同じ方向に進めば、その次は尖閣諸島(沖縄県石垣市)という話になってくる。想像したくない光景だ。
台湾はウイグルジェノサイドに毅然と
台湾総統選の結果についてウイグル人としての喜びもある。2022年12月末、台湾の立法院(国会に相当)は中国政府によるウイグル人への民族迫害について「ジェノサイドであり人道に対する罪」と認定する決議を採択した。欧米などの議会に続き、台湾立法院が11番目、アジアで初めてジェノサイド認定をしたことになる。中国がウイグル問題を「西側のでっち上げ」という中で、明確に「違う」といったのが民進党が与党の台湾立法院だった。
日本の政治家にはウイグルジェノサイドについて「事実確認ができない」「情報収集ができない」と言う人がいる。台湾はあれだけ中国に脅しを突き付けられている中でも、毅然(きぜん)と与党も野党も全会一致でジェノサイド認定した。日本も台湾の姿勢を見習ってほしい。 (聞き手 奥原慎平)
https://www.sankei.com/article/20240115-JI7NQUXFMRCTRGWE334IJEQ75I/