習氏指示に日本ウイグル協会長「非常に危機的」
- 2023/9/12
- 活動報告

中国の習近平国家主席が8月26日に新疆ウイグル自治区を視察し、「イスラム教の中国化」の推進や「中華民族の共同体意識の増強」を指示した。国際社会が中国の民族迫害政策を非難する中、ウイグル人への同化政策を緩めない姿勢を改めて示した形だ。日本ウイグル協会のレテプ・アフメット会長は11日までに産経新聞の取材に応じ、「『ジェノサイド』(集団殺害)の加速をうたい、非常に危機的なメッセージだ」と懸念を示した。
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《習氏のウイグル自治区入りは2014年以来8年ぶりだった昨年から2年連続となる。今回、習氏は区都ウルムチ市で開かれた会議に出席し、地元幹部に「社会の安定維持」と「違法な宗教活動」を押さえ込むよう指示した。標準中国語(漢語)教育の徹底、漢人の自治区移住の推奨なども表明した》
──習氏のウルムチでの発言をどう受け止めているか
「欧米諸国などからジェノサイドと批判されるウイグル政策の加速を明確にうたった形で、非常に危機的なメッセージだ。言語も宗教も人口比もウイグルのアイデンティティーを薄めようとしている。国際社会がどんなに声を上げても、ウイグル民族や文化を滅ぼす意志は固いと受け止めている」
《国際社会はウイグルの人権侵害状況への批判を強めている。国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)は昨年8月、テロ対策の名目でウイグル人に「深刻な人権侵害が行われている」とする報告書を発表。米国は昨年6月、ウイグル自治区からの物品輸入を原則禁止するウイグル強制労働防止法を施行し、制裁対象の中国企業を追加するなど、運用も厳格化した》
──習氏はウイグル人の収容政策に言及しなかった
「中国共産党は2019年までに(ウイグル人を強制収容したとされる)『職業技能教育訓練センター』を閉鎖したと主張する。だが、消息不明の人や施設から解放されていない人がいる。今月も新たな収容者の存在が相次いで報じられた。私の親戚も12人が収容されたと確認された。妻のきょうだいは勤務先で警察に呼ばれたまま、消息が分からず、裁判も開かれていない状況だ」
──中国当局は自治区へのツアーを催し、平穏な暮らしぶりをアピールする
「習氏も今回、ウイグル自治区の良さを伝えるとして、外国人旅行者向けのツアーの拡大を指示した。ツアーは中国政府がコントロールし、幸せに暮らしているウイグル人を装うプロパガンダ(政治宣伝)に過ぎない。尾行や行動制限もない旅行は許可されていない。隠したいことがあるからだ。日本人がツアーに参加して統制された情報をそのまま発信することは中国の犯罪に加担することだ」
──自治区出身者に対する嫌がらせはあるか
「在日ウイグル人は中国当局から現地に残した家族を人質にとられ、ウイグル協会の活動情報などを求められている。パスポート更新の申請も何カ月も放置され、現地で手続きを求められた人もいる」
──10月に「国際ウイグルフォーラム」が開催される。日本で開く意義は
「中国がウイグル問題について欧米が作り上げたデマだと宣伝する中、アジアで唯一中国側の主張に反論している国が日本だ。国際社会がこれまで以上に連携してウイグル問題に取り組まないと、民族迫害は改善しない。中国の隣国の日本から『国際社会は納得していない』『責任を追及する声がここにある』と発信してほしい」(聞き手 奥原慎平)
https://www.sankei.com/article/20230911-OMVE7ZOFUBLAJBILI7JA5EUGTU/