「知らずにいるという暗闇晴れる」 中国の流出データでウイグル族が知る、不明家族の実態

CNN 2023/2/20

(CNN) 想像してほしい。家族が全員拘束もしくは投獄された世界を。理由は不明。どれだけの間閉じ込められているかも分からない。警察はあなたのDNA、声のサンプル、虹彩(こうさい)スキャンもファイルで記録している。あなたの子どもや家族、全コミュニティーの生体認証データと共に。

何年にもわたり、このディストピア(暗黒郷)的統治システムは中国西端に位置する新疆ウイグル自治区で現実のものとなっている。そこでは当局が巨大な監視機構を作り上げ、域内に暮らすウイグルをはじめとする少数民族の拘束や監視、意見の封じ込めを行う。

今、そうしたシステムの規模が暴かれようとしている。中国の警察文書の大掛かりな流出が新たな段階に入ったためだ。膨大な量のファイルが、新たなオンライン検索ツールによって一般からもアクセス可能になった。このツールを使えば、中国の体制が新彊にいる家族をどれだけ詳細に把握しているのか突き止めることができる。

「新彊公安ファイル」として知られるこうしたデータのごく一部が公開されたのは昨年5月。その後のさらなる精査によって、ファイルの全貌が明らかになった。1万1477件の文書と数千枚の写真から、およそ83万人の個人の姿が浮かび上がった。

警察に帰属する当該のファイルは匿名の人物がハッキングし、流出させた後、共産主義犠牲者記念財団で中国研究を統括するエイドリアン・ゼンツ氏の手に渡った。ゼンツ氏とそのチームは数カ月がかりで上記のツールを開発。念頭にあったのは世界各地に散らばるウイグルの人々がツールを駆使し、親族にまつわる具体的な情報を得ることだった。何年も引き離され、音信不通になっている身内の情報だ。

新たなオンライン検索ツールを使って、CNNはここまで22人の個人に関する記録を追跡した。それに先駆け、3つの大陸で暮らすウイグルの離散者の下で、ツールの試験運用を行った。

国外脱出したウイグルの人々が親族の運命を記した中国の公式文書を目にすることができたのは、この時が初めてだった。そこにはなぜ彼らが拘束されたのか、場合によってはどのように死亡したのかといった情報が含まれる。ファイルの閲覧については、力を与えられる気がするとした人がいる一方、最も恐れていた事態が確定したことで罪悪感を抱いた人もいる。

中国政府がファイルの正当性を否定したことは一度もないが、国営メディアの環球時報は最近、ゼンツ氏が「風評をまき散らしている」と指摘。同氏によるファイルの分析は「誤情報」だとの見解を示した。

「数万人」が拘束
当該のウェブサイトが提示するデータセットは、新彊について一般に入手可能なものとしてこれまでで最大規模となる。人々は中国のIDナンバーを使って、未加工のファイルの中から数十万人の個人を検索することができる。

大半の情報は2つの地域に由来する。カシュガル地区に位置する疏附県と、イリ・カザフ自治州に位置するテケス県だ。両県について研究者らは、ほぼ完全な人口データを把握していると考えている。

新疆ウイグル自治区に暮らすウイグルの人口は1100万人前後。加えて他のチュルク語系少数民族が400万人前後いる。従って、当該のデータは氷山の一角に過ぎない公算が大きい。

ゼンツ氏によれば、文書の中では「数万人」が「拘束」に分類されている。最年少はわずか15歳だという。

「(この文書は)被害妄想的な警察国家の機能に関する内部情報に他ならない。まさしく身の毛がよだつ内容だ。こうした残虐行為の本質がますます明らかになりつつある」(ゼンツ氏)

CNNはファイル及びこの記事に登場する家族についてのコメントを求める詳細な要望書を中国政府に送付したが、現時点で回答を受け取っていない。

流出した警察記録はほとんどが16年から18年にかけてのもの。これは習近平(シーチンピン)国家主席が新彊でのテロ行為に対する「猛撃」キャンペーンを強化していた時期と重なる。

米政府と国連は最大200万人のウイグル族や他の少数民族が巨大な収容キャンプのネットワークで拘束されたと推定した。一方、中国政府はこれを過激主義の撲滅を目的とする「職業訓練センター」と呼ぶ。

今回のファイルが提供するのは当時の時間枠で切り取った状況であり、現状を反映してはいない。

昨年5月にデータの一部が公開された際、中国政府はファイルに関する個別の質問には答えなかった。しかし米首都ワシントンの中国大使館は声明を発表し、新彊の住民について「安全で幸福な、充実した生活」を送っていると主張。そのことが「新疆を巡るあらゆる種類の虚言や誤情報に対する強力な回答になる」と述べていた。

また昨年12月には新彊の当局者が、流出した写真で特定された人々の「ほとんど」は「普通に暮らしている」と主張した。それ以外の人々の状況は明言しなかった。またファイルに記載のあった女性の一人は「1度も拘束されたことはない」ものの、「昨年6月に職業訓練施設を卒業した」と説明した。これは文書が公開されてから数週間後に当たる。

「日々苦しめられる」
過去4年間、CNNは海外のウイグル族や他の少数民族数十人の証言を集めた。その中にはキャンプ内での拷問やレイプの主張があった。CNNは愛する人の情報を切望する人々にも話を聞いた。

そうした情報を親族が見つけ出すのは信じがたいほど難しい状況にある。集団的懲罰の洗練されたシステムは、新疆にいる人々に脅しをかけている。もし海外の家族が電話でもかけようものなら、拘束されてしまうという恐怖でだ。

「このブラックホールは最も恐ろしいものだ」とゼンツ氏は語る。「中国がこのブラックホールを作り出せる理由の一部がこれだ。実行可能なもので最も恐ろしいものだ。愛する人の運命、そして生死でさえも知ることもできない状況だ」

世界の異なる場所で、ウイグルの3家族がこの検索ツールを使って、親族に関する詳細な公式データを初めて見つけることができた。

ワシントン南郊に住むママジャン・ジュマさんにとって、ファイルは家族に関する「計り知れない情報」をもたらしたが、同時に最悪の懸念を確定する内容でもあった。家族が自分との関わりを理由に有罪になったことが分かったからだ。

ジュマさんは米国が出資する報道機関、ラジオ・フリー・アジアのウイグル関連の業務で幹部を務める。新疆での状況を16年にわたり取り上げてきた。フォード財団の特別研究員に選ばれ、03年に中国から米国へと渡った。

「彼らは自分を指名手配のテロリストと呼び、中国に強制送還させようとした」「親類も自分のせいで悪者扱いされた。人間と思われていなかった」(ジュマさん)

ファイルの内容から、ジュマさんの近親者と遠い血縁者29人が拘束されていたことが分かった。長い刑期を言い渡されたケースもある。ジュマさんとのつながりが理由だった。

ジュマさんは3人の兄弟全員が投獄されたと知った。このうち1人は警察に写真を撮られていた。ジュマさんによると写真に写った弟は元来明るくて社交的な性格だったにもかかわらず、魂を抜かれたような表情をしていた。それを見て心が沈んだという。

父親の死の詳細もファイルで知った。死因は「様々な種類の合併症」だとされていた。

心をかき乱すような事実が明らかになったにもかかわらず、ジュマさんはファイルを見て「安堵(あんど)」の気持ちを抱いた。何年も知らずにいた状態が解消されて、「力を与えられる」思いだと語った。

「自暴自棄の苦い思いが消えてなくなる」、「知らずにいるという暗闇も晴れていく」(ジュマさん)

それでも、自分が故郷を去ったために家族が迫害されているという罪悪感に耐えるのは容易ではない。

「日々それに苦しめられている」と、ジュマさんは語った。

地理の教師を標的に
ウイグルの学者でノルウェーに逃れているアブドゥウェリ・アユプさんの場合、警察のファイルを検索しても安堵感は一切ない。あるのは苦悩のみだ。

本当のところ、見なければよかったとさえ思う。

カシュガルで語学学校を経営していたアユプさんは、15年8月に新彊を脱出した。それ以前には政治犯として収監されていた時期もある。CNNの取材に対し、その間拷問や集団レイプの被害に遭ったと明かしていた。

兄弟と妹が自分のために標的になっていることは既に聞いていたが、今回のデータベースの検索によって初めて、それが公式に確定した。

アユプさんは「政府の文書に、自分と関係のあることだと告げられた。自分のせいなのだと」と語り、今は「罪の意識と責任」を感じていると言い添えた。

高校で15年間地理を教えていた妹は、警察のファイルの中で「ブラックリスト入り」に分類された1万5563人の1人だった。

アユプさんは「妹が逮捕されたことは聞いていた。公務員として不誠実だと非難されたからだ。ブラックリストに入ったのは私のせいだ」と述べた。

アユプさんによると、ウイグルの人々が新彊で公的な仕事に就く場合、自分たちの文化的な信条を実践し続けていると「不誠実」と糾弾されることがよくある。「政府に100%の忠節を尽くさない裏切り者」と、レッテルを貼られるのだという。

「おびえながら暮らすだろう」
新たな検索ツールを初めて使用した時、豪アデレードに住むウイグルのマルハバ・ヤクブ・サライさんは、思いがけず2人の親類に関する警察記録を見つけた。2人は姪(めい)と甥(おい)で、ファイルが作成された17年の時点ではそれぞれまだ15歳と12歳だった。

甥はブラックリストの「カテゴリー2」に区分され、「治安とテロ行為に関する事件」での「共犯の疑いが濃厚」と記載されていた。

ファイルは姪と甥について、シリアやアフガニスタンなど「疑惑を起こさせる」26カ国のうち少なくとも1カ国に旅行したことを示唆していた。サライさんによればそれは事実ではない。中国国外で2人が渡航した経験があるのは、休暇で出かけたマレーシアだけだ。

「こんなことは馬鹿げている。ひどい」。甥のファイルを読み進めながら、サライさんはそう口にした。「後2~3カ月で彼は18歳になる。彼らはあの子を逮捕するつもりだろうか?」

2人の母親でサライさんの姉妹にあたるマイラ・ヤクフさんは、数年を収容所で過ごした後、20年の終わりに禁錮6年半の判決を言い渡された。

ヤクフさんは13年、サライさんと両親がオーストラリアで家を購入できるように送金した後でテロ行為に資金援助した疑いをかけられていた。

サライさんとヤクフさんには1998年に新疆を後にし、2007年にオーストラリアで事故死した兄弟がいる。警察はこの兄弟との血縁関係を理由に甥を疑っていると、サライさんはみている。兄弟と甥が会ったことは一度もないという。

「心の痛みを感じる。いつ姪と甥が捕まるかと、おびえながら暮らすことになるだろう」(サライさん)

「心のウイルスのように」
「関係性による罪」が子どもたちにまで及ぶ実態は、中国という国家がウイグル人口に対して抱く被害妄想を反映していると、ゼンツ氏は指摘する。

「国家は、家族全体が汚染されていると考える」「これは習近平氏をはじめとする当局者らが内々で話す内容と一致すると思う。彼らはイスラム教を人々に感染する心のウイルスのように形容している」

今回の新たなデータ流出を受け、研究者らは新疆内部での政策に関する証拠が一段と拡大するのを期待する。またファイルへの広範なアクセスを提供することで、各国政府や人権団体には改めて中国に責任を課すよう取り組んでほしいと願う。

「これがウイグルの人々の間にいくらかの希望を呼び起こすことを切に願う」(ゼンツ氏)

必死の思いで再会を果たそうとする世界中のウイグルの家族にとっては、ファイルに記された83万の名前の一つひとつが愛する人の象徴に他ならない。

米国で暮らすジュマさんは、「美しい魂が、これらの数字の裏で破壊されている」「全くいわれのない苦しみがそこにある」と語った。

https://www.cnn.co.jp/world/35199926.html

在日ウイグル人証言録

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