ウイグル人らに対する大規模監視および深刻な人権侵害を助長する日系企業の技術と責任
- 2023/1/18
- 活動報告
私たちは、東トルキスタン(新疆ウイグル自治区)でのウイグル人等のチュルク系民族への非人道的犯罪の一部を構成する大規模監視に関わったとして米国が制裁対象にした中国の監視カメラ大手企業『ハイクビジョン(杭州海康威視数字技術)』の監視カメラを分解調査した結果、その監視カメラに複数の日系企業が部品を供給していることを確認した。
この調査結果をもって、企業の問題意識と今後の対応を問う質問状を送付した。その結果、マイクロン ジャパン株式会社以外の6社から回答を得ましたが、ほとんどが回答になっておらず、単に会社の経営方針を述べるだけでした。その回答を受けて作成した報告書はこちら:
ウイグル人らに対する大規模監視および深刻な人権侵害を助長する日系企業の技術と責任
企業からの回答の詳細はこちら。※2023年1月19日現在
1.ローム株式会社
2.TDK株式会社
3.旭化成エレクトロニクス株式会社
4.ザインエレクトロニクス株式会社
5.ソニーグループ株式会社
6.セイコーエプソン株式会社
7.マイクロン ジャパン株式会社:無回答
ハイクビジョンは監視カメラのシェアで世界一位の企業で、同じくウイグル人の大規模監視に関わったとして米国が制裁対象にした中国の監視カメラ大手企業『ダーファ・テクノロジー(浙江大華技術)』(2022年10月日本に進出)とハイクビジョンの2社で世界の監視カメラ市場シェアの最大3分の1を占めると言われている。また、この2社とも、一部製品に「ウイグル人の顔を識別できる機能」を搭載していたことが、セキュリティと映像監視に関する世界有数の調査会社IPVMの調査等で明らかになっている。
ジェノサイドや人道に対する罪にあたると国際社会から問題視されている深刻な問題だけに、それを支える監視システムへの技術・部品供給が確認されている企業が重大な説明責任を負っているのは明らかですが、企業の回答を見る限りでは、事態の深刻さへの問題意識と社会的責任に欠けていると言わざるを得ず、今後の具体的な対応にも期待できないと考えている。
日本はジェノサイド加担に注意を!
これまでは、日本企業とウイグル人の強制労働問題の関与が指摘されてきた。2020年3月、オーストラリアのシンクタンクASPIが、世界の有名企業83社のサプライチェーンに組み込まれている中国の工場で、収容施設から移送された8万人以上のウイグル人が強制労働させられているとの調査報告書を発表した。その中には、日本企業14社も含まれていた。2022年12月、英シェフィールド・ハラム大学の研究者チームが調査報告書を発表し、世界の主要な自動車メーカーがサプライチェーンを介してウイグル人の強制労働に関与していると警鐘を鳴らした。その中には、ホンダ、トヨタ自動車も含まれている。また、日本では東京都等が太陽光パネルの義務化を進めているが、日本の太陽光パネルのほとんどが中国からの輸入に依存している。専門家たちによると、中国製太陽光パネル部品の大半がウイグルで作られており、ウイグル人の強制労働問題と深く関係している。
そして強制労働問題に加えて、今度は、日本企業の技術がウイグルジェノサイドを支える大規模監視システムを助長していることが浮上した。監視システムによって大規模収容が行われていることに鑑みれば、当該監視システムへの技術・部品の供給は、これらの非人道的犯罪行為を加担・助長するものと言える。また、『ハイクビジョン』は、ウイグル人の人権侵害を理由に米国政府から禁輸制裁を受けている(「エンティティー・リスト(EL)」に掲載されている)企業で、米国政府は更に厳しい制裁である「特別指定国民(SDN)」リストへの掲載も検討していると報じられている。このような状況の中、技術や部品を供給することは、『ハイクビジョン』に制裁逃れの手段を提供し、ウイグル人への大規模監視を終わらせるための努力に水を差すことになり、ジェノサイドや人道に対する罪に相当すると指摘されるウイグル人への深刻な人権侵害を助長することに繋がる。
日本企業や行政が意識すべきは、ウイグル問題をめぐり日本が、欧米からの制裁逃れの穴場として中国に利用されるリスクが高い点だ。ウイグルジェノサイドに加担しないために、そして日本企業を守るためにも、強制労働防止法の整備が求められる。また、国連人権理事会が2011年に採択したビジネスと人権指導原則に基づき、日本企業の技術が非人道的犯罪に加担することを阻止する輸出管理規制法整備が求められる。