SHEIN製品、新疆ウイグル綿使用と検査結果が示す-米強制労働対策に抜け穴

Bloomberg 2022/11/22

中国の強制労働に関係する綿製品の輸入を禁止しようとする米国の取り組みには大きな抜け穴がある。ファストファッションを消費者に直接送る中国のオンライン小売り大手シーイン(SHEIN)の衣料品だ。中国発の動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」を介して同社製品の人気が広がっている。

ブルームバーグ・ニュースのためにドイツの研究所が今年2回実施した検査で、シーインが米国に輸出した衣料品に中国の新疆ウイグル自治区で生産された綿が使われていることが判明した。ティックトックには購入したシーイン製品を自慢する若者達の投稿があふれているが、同社を巡る懸念への対応を急ぐ必要が出てきた。

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米国務省は新疆ウイグル自治区に住むイスラム教徒のウイグル族に対し「恐ろしい虐待」が行われていると認定。米連邦当局は昨年、同自治区からの綿などの製品の輸入を禁止した。欧州当局も同様の禁止措置を提案。拘束されていたウイグルの人々による証言と研究者や人権擁護団体による一連のリポートは、中国政府が同自治区で100万人余りを収容所に送リ込み、屋内外で労働を強制していたと主張している。

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米国の輸入禁止措置により、小売り各社は「新疆綿」を調達していないことを証明しなければならないが、米国の消費者に衣料品を直接販売するオンライン専業のシーインは事情が異なる。

米税関・国境警備局(CBP)は申告要件を800ドル(約11万3700円)以上としており、シーインの顧客向け出荷は一般的にこの基準を下回り、小売業者の大量輸入に課せられる厳しい検査の対象にならない。

シーインは発表文で、ブルームバーグの検査結果に異議を唱えず、新疆綿を使っているかどうかにもコメントしなかった。ただ、「現地の法と規制を確実に順守する」ため、全てのグローバル市場で措置を講じていると説明した。

同社の米国向けウェブサイトにある「持続可能性と社会的影響」のリポートによれば、同社は「強制労働」やその他の環境・社会的懸念に対し一切容認しない方針を確実にするため定期的な監査を実施しているという。

米国のアプローチは抜け穴もあるが、シーインに課題を突き付けている。自社製品に新疆綿が使われていると認めれば、消費者を遠ざけるリスクがある。中国政府は新疆ウイグル自治区で行われているのは強制労働ではなく、雇用創出プログラムだと主張し、人権侵害の疑いを否定している。

一方、シーイン製品の人気は、強制労働で作られた製品を国内市場から締め出そうと米政府が講じた対策の限界を露呈させ、不当な労働慣行と闘おうと訴える人権活動家や繊維メーカー、実店舗を展開するアパレル小売り各社を失望させている。

「シーインのような中国企業はこうした抜け穴を利用」し、「製品が厳しい検査を受けず」に顧客に渡るようになっていると全米繊維団体協議会を率いるキム・グラス氏は指摘した。

セコイア・キャピタルやIDGキャピタルなど投資会社の出資を受け、シーインが今年実施した資金調達では企業価値が1000億ドルと評価された。スウェーデンのヘネス・アンド・マウリッツ(H&M)や「ZARA」ブランドを展開するスペインのインディテックスというライバル2社の時価総額を合わせても及ばない評価額だ。

業績に詳しい関係者によると、トレンドを見極め、安価な商品で素早く対応することのできるシーインの世界売上高は昨年160億ドルを突破し、今年は240億ドルに向かっている。その3分の1は米国での売り上げだと推計されている。

労働問題の活動家や人権団体などは、シーインが新疆綿を使っていると早くから懸念を表明してきた。ブルームバーグが委託して行った検査は、この問題に関する検査結果を初めて公開情報として提供した。3月と7月の発注に対してシーインが出荷した衣料品は、独ユーリッヒの研究所アグロイソラブに分析のため送られた。シーインの米国ウェブサイトで「cotton(綿)」と検索して表示された製品約6万点の一部だ。

同研究所は綿花が栽培された地域の標高などの気候特性を示す綿の繊維に存在する炭素や酸素、水素の同位体の変化を測定する安定同位体分析を用いて、製品を検査。中国で事業展開する米アパレル企業からブルームバーグが入手した新疆綿と比較した。この米企業は社名を明かさない条件でブルームバーグに協力した。

シーイン製品は同研究所が新疆から以前入手した別のサンプルとも比べられた。シーインが3月の発注に応じて出荷したズボンやブラウスなどの製品は、2つの新疆綿サンプルとわずかな違いだけで一致した。

シーインは、アグロイソラブと同じタイプの同位体検査を採用している別の研究所、ロンドンのオリテインと契約したと資料で明らかにした。オリテインのルパート・ホッジズ最高商業責任者は同研究所が「しっかりとした追跡可能なサプライチェーンを確保」する支援で、シーインとの協力を今年開始し、同社が「事業を展開する国のあらゆる法的要件の順守」を手助けすると語った。

オリテインは今年、利益相反を理由にブルームバーグ向けにシーインの製品を検査することを拒んでいた。シーインとオリテインはオリテインによる検査結果についてコメントを避けた。

原題:Shein’s Cotton Tied to Chinese Region Accused of Forced Labor (抜粋)

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2022-11-21/RLOAF9DWRGG001?srnd=cojp-v2-markets

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