産経新聞 2021/6/9
【ワシントン=黒瀬悦成】中国の新疆(しんきょう)ウイグル自治区での人権侵害を調査している、米非営利団体「共産主義犠牲者記念財団」のエイドリアン・ゼンツ上級研究員は8日、中国政府が自治区のイスラム教徒少数民族に人口抑制を強要しているとし、向こう20年間以内に出生数で約260万~450万人分の強制不妊措置が取られると試算した報告書を発表した。
バイデン米政権は、中国政府による自治区でのウイグル族などに対する人権侵害を「ジェノサイド(民族大量虐殺)」と位置付けている。
報告書は、中国政府による自治区の少数民族の人口削減と「同化」を狙った人口抑制政策の「実態」を指摘するものとして、国際社会の注目を集めるのは確実とみられる。
報告書によると、中国政府は自治区で「人口最適化」政策と称する強制不妊措置を2017年に導入した。中国政府がこのまま強制不妊を続けた場合、少数民族が集中的に居住する自治区南部の人口は40年までに約860万~1050万人になるとしている。
現在の自治区南部の人口は947万人。一方、強制不妊が導入されなかった場合の40年の人口は、中国の研究者の試算で1314万人が見込まれていた。
中国政府の公式統計でも、自治区での19年の出生率は17年比で48・7%も低下しているという。
また、中国政府が同国の人口の9割以上を占める漢民族の自治区への入植を奨励し、ウイグル族らを他の地域へ放逐している問題で、ゼンツ氏の試算では自治区南部でのウイグル族の人口比率は現在の約25%から40年には8・4%まで低下すると指摘している。
中国共産党の中央政治局会議は5月31日、1組の夫婦に子供を2人まで認める制限を3人までに緩和する新方針を示した。
ただ、報告書によると、産児制限をめぐっては他地域であれば違反者は罰金を支払えば済まされるが、自治区の少数民族に対しては違反者に強制収容や強制不妊、結婚しているカップルの離別強要などの厳罰が科せられている。このため新方針が導入された場合、少数民族の締め付け強化の道具として利用される恐れが強いと指摘している。
https://www.sankei.com/article/20210609-FDZV5YQTTNO6DLMI6GAYYYYCHQ/