ウルケシ氏のブログより
2009年7月8日付の記事
抑圧の宣言
少数民族のウイグル人として、自分の両親が故郷故郷と呼ぶ現代のウルムチで最悪の軍隊と民間人との衝突により死者、負傷者及び逮捕者が出た事にはぞっとさせられた。両親とは連絡が取れず、他の人と同じく新疆で何が起こっているのか漏れ伝わってくる報道に頼っている。政府発表の156人死亡、1000人以上の負傷者及び1400人以上の逮捕者という数字を受け止めるしかない。
勿論、私はそのような数字には懐疑的である。1989年の学生抗議運動の指導者として、いまだに6月4日に何人の死者が出たのかという信頼できる政府の発表を待っている。政治的にほとんど何も変わっていない私の故郷で何故今なのか、そして未だに亡命生活を送っている他の人々はとても多い。
私が唯一言えるのは、本当の死者等が発表より多いとしても中国政府は妥協の余地のない、冷酷なメッセージを新疆のウイグル人、多数派の中国人そして全世界にウイグル人の抗議勢力は力によってねじ伏せられるという事を伝えたいのだという事である。北京は疑問の余地なく市街地で一般市民を銃撃するという方針を打ち出した時、多数派の漢人勢力からの幅広い支持を得る事を期待していた。外務省報道官が記者会見でウイグル人の抗議者の事を外国から扇動、指示された組織的暴力犯罪で、国内の無法者によって行われたと非難した時、その証拠としてビデオを見せた際、にやけた笑いとしか言いようのないものを顔に浮かべ、私達は最早国際世論を気にも留めない中国と交渉しているのだという印象を受けた。
中国国内の統一見解は、ウイグル及びチベットの漢人による占領は、封建的な政権からの解放と栄光をもたらすというものである。この論理によると、中国の文化的優越性と統治へのいかなる異論も一種の裏切りとみなされる。実際、ある民族主義的なネチズンがウルムチで起こった最近の出来事について私のブログへまさにこの件に関して投稿していた。彼は、漢人こそが支配勢力でウイグル人により良い生活をもたらすという。
私は、この種の議論には懐疑的であると答えた。もしそれが正しいとすると、1930年代の日本の中国侵攻を支持した方が良かったかもしれないという事になる。日本人も私たちにより良い生活を約束したし、ひょっとすると実現してくれたかもしれない。
中国の支配的漢文化は、民族のプライド(それも様々な民族が入り混じったものを中国的と言っている)に対するいかなる攻撃にも敏感である。そして日本の侵攻は一般的にアヘン戦争よりも屈辱的であると考えられている。それは中国の民族主義者にとってもうひとつの悩ましい怨恨である。これにも拘わらず、一般的な中国人は、少数民族に対し栄光と繁栄をもたらしてやっているという尊大な態度をとっている。彼らには、正直に言ってしまえば増え続ける漢人の移民がウルムチやラサといった都市で政治的に抑圧され様々な機会を奪われつつある少数民族を圧倒しても、抑圧される側の細かい事情を全く分かっていない。
1989年の政治改革に参加したため亡命生活を送っているが、亡命した事を後悔している。この大変な時期に両親と共にいられず心苦しい。だが、私は民主主義が政治的な抑圧からの最終的な解放手段であると信じている。また民主主義は、すべての利害集団にとって幅広い手段であるとも信じている。民主主義は、民族主義の利害のために使われるべきではない。
私は、新疆やチベットの独立が我々の問題の解決策であるというつもりはない。だが、少数民族の自決権は別である。これにより基本的な権利、民族的に異なるウイグル人、チベット人と同じく、また同じ事を文化的にも政治的にも中国に対して異を唱える台湾の人々も、私の家でもある台湾の人々には、中国の一部でいたいかどうかを決める権利がある。
新疆の私の民族には、この機会を一度も与えられなかった。ウルムチに住んでいるのは今や70%が漢人である。ウルムチのウイグル人は、事件の日中国国歌を歌いながら「ウイグル人を根絶やしにしろ」と叫ぶ武装した中国人から隠れていた。政治的に抑圧され自分たちの故郷で少数派になってしまったウイグル人の不満の爆発への政府の回答は、彼らに分離主義者、テロリストというレッテルを貼り、市街地で銃弾を浴びせる事であった。
私は中国に属し、現代の中国で生まれた。一度より良いところにしようと公に格闘したが、民族主義者が民主主義をもてあそび、民族主義が抗議者や反対者を弾圧するような所では民族主義者にはなれない。
ウイグル人は、政治的に抑圧される民族で、その上文化的、経済的にも抑圧される。私はウルムチ事件における政府の迅速な死傷者数の発表は、新疆の原住民が平均的な中国市民に与えられている権利すら持っていない事を公式に認めることを意味するのではと考えざるを得ない。または、もっと簡単に言えば彼らの当然の怒りであると。
私は外国の記者達に、中国政府が国内の紛争に関する報告書を公開してくれれば、世界は中国が国内の抑圧された少数派に対して宣戦布告したと理解してくれる事を望むだけである。
【ウルケシ氏のブログ】
http://wuerkaixi.com/
2009年6月4日のエントリー「20年が過ぎて」日本語訳 |