無期懲役の学者 即時解放を 日本ウイグル協会 都内でシンポ「国家分裂罪」で服役10年目
- 2024/10/7
- 活動報告

世界日報 By 石井 孝秀 2024年10月5日
中国で2014年に国家分裂罪に問われ、無期懲役で服役中のウイグル人経済学者イリハム・トフティ氏の即時解放を求めるシンポジウムが9月23日、都内で開かれ、ウイグル問題などに関心のある日本人支援者などが参加した。同氏はウイグル人と漢族間の相互理解に努めた知識人として国際社会から高い評価を得ており、ノーベル平和賞の受賞が期待されている。(石井孝秀)
中国によるウイグル人弾圧が注目されるようになったのは2000年代初頭。米国がイスラム過激派など「テロとの戦い」を表明したのに合わせ、イスラム教徒であるウイグル人への抑圧を正当化するようになった。
08年北京五輪(夏季)の開催決定もその動きに拍車を掛け、治安の安定化などを理由にウイグルへの同化政策を強化。警官によって礼拝中に射殺されたり、テロリスト扱いされ投獄される事件も起きた。
日本ウイグル協会によると、トフティ氏は中国当局からの一方的な情報発信により生じた、漢族社会とウイグル社会との間の亀裂を懸念。06年に「ウイグルオンライン」という中国語とウイグル語によるサイトを立ち上げ、ウイグル文化の発信やウイグル社会に関する独自の調査結果などを発信していた。
同氏はウイグル人と中国政府間の橋渡しを目指していたものの、14年に北京の自宅で拘束。同年行われた裁判で無期懲役を言い渡され、同サイトも閉鎖された。
シンポジウム「良心の囚人イリハム・トフティを釈放せよ」(主催・日本ウイグル協会)で、同協会のレテプ・アフメット会長は「(トフティ氏は)分裂運動も独立の主張もしておらず、合法的にウイグル人の権利を訴えていただけ。ウイグル問題への扱いはまさに無法地帯」と強調した。
さらに「もしノーベル賞を受賞できれば、解放までいかずとも獄中の待遇改善につながることが期待できる。ウイグル問題への国際的な関心も高まるだろう」と願いを込めた。
トフティ氏は、19年には人権や自由の擁護活動をたたえるサハロフ賞を受賞。今年のノーベル平和賞候補にもノミネートされているという。
アムネスティ・インターナショナルによると、17年から新疆ウイグル自治区への同化政策がより強硬なものとなり、自治区全域には世界でも最も精巧な監視体制が敷かれ、「再教育施設」と称する強制収容所も建設。刑務所と合わせて約100万人が拘束されたとみられている。
シンポジウムに出席したアムネスティ・インターナショナル日本の井出慶太郎氏は、強制収容所の現在について「多くが閉鎖されたのではないかという情報もあるが、イスラム系の少数民族に対する危機的な人権状況は変わっていない」と説明した。
質疑応答では、日本人の参加者の中から「G7(先進7カ国)の中で日本を除くすべての国が、ウイグル問題で制裁に踏み切っているのに、日本だけが制裁していないのは日本人として恥ずかしい。国内でも、中国で禁止されている出版物をネットでクリックしただけで、数日後に中国語で抗議の電話がかかってきたりと、そういう威圧活動を体験したことがある」という声が出た。
井出氏は「中国は海外世論をかなり気にしている。獄中の知識人の解放を求めるウェブ署名やこういった集会への参加といった行動も、中国政府に『見ているぞ』『忘れていない』というメッセージを示すことにつながる」と、草の根運動の重要性を呼び掛けた。
シンポジウムには米国在住のトフティ氏の娘ジェウヘル・イリハムさんもビデオメッセージを寄せた。17年以降は家族の面会も許されず、トフティ氏の安否も不明な中で「父のような多くの無実のウイグル人が、暗い独房に忘れ去られてしまうことを恐れている」と心境を吐露した。
また、中国政府からは、父親と連絡を取りたいならば中国批判を行わないよう脅されていると明かした上で、「父が私に何を望んでいるかはっきりしているので、私は止まることはない」と決意を語った。