「妹は中国で拘束された」ウイグル男性の訴え 原因はゼロコロナ関連のSNS投稿か、当局の監視はネットにも?
- 2023/2/27
- ウイグル情勢

47 NEWS 2023/2/26
今年1月、新型コロナウイルス対策として厳しい行動制限を強いてきた中国の「ゼロコロナ」政策が、突如終わりを告げた。長期にわたる厳しい統制に対し、抗議の渦は全土に拡大。政策は大きくかじが切られたが、多数のデモ参加者が拘束されるなど余波は続いている。米国に暮らす中国新疆ウイグル自治区出身の男性も、中国国内の妹がゼロコロナに関して交流サイト(SNS)に投稿したことで当局に拘束されたと主張。中国当局の監視の目はネット空間にも向けられているとみられ、依然として変わらない強権的な統治理念が見え隠れする。(共同通信=上松亮介)
▽途切れた消息
米東部マサチューセッツ州に暮らすケウセル・ワイットさん(26)は長らく、新疆ウイグル自治区の家族と直接連絡を取ることを避けてきた。ウイグルの人々が海外の家族と連絡を取っただけでも治安当局から問題視されるからだ。そんなケウセルさんが中国河北省の大学に通う妹カミレ・ワイットさん(19)の異変に気付いたのは昨年12月12日のことだった。
最後に妹と連絡を取ったのは2019年9月。安否確認のため、目を通してきた中国の通信アプリ「微信(ウィーチャット)」への投稿が突然途切れたのだ。不審に思い、リスク覚悟で中国国内の親族や友人に連絡を取ったところ、妹が新疆ウイグル自治区アルトゥシュに帰郷した後、地元当局に拘束されたとの証言を得たという。
▽強まる監視
中国では昨年11月24日、新疆ウイグル自治区ウルムチで起きた10人死亡の高層住宅火災を契機に、各地でゼロコロナ政策への怒りが爆発した。火災で救助が遅れたのは、コロナ対策で高層住宅の周囲が封鎖されていたのが原因と考えられたためだ。SNS投稿を通じて抗議の動きが波及した背景もあり、中国当局はネット空間の検閲に躍起になっているとみられる。
ケウセルさんは、妹がウィーチャット上でウルムチ火災の犠牲者に連帯を示すような投稿をしていたと指摘。さらに、アルトゥシュに暮らす50代の父親に地元当局から妹の投稿に関する問い合わせや削除依頼もあったと明かし「投稿内容を問題視した当局が妹を拘束した」との見方を強める。
▽父親も拘束経験
新疆ウイグル自治区では「再教育」や「職業訓練」名目で、多くの人が強制収容され、その数は100万人以上とも言われてきた。ケウセルさんが妹が不当に拘束されたと確信するのは、父親も2017年7月から2年近く、理由も分からぬまま収容施設に送られた過去があるからだ。
ウイグル弾圧は当初から、天山山脈を境に北部に広がる区都ウルムチなど「北疆」地域より、ケウセルさんの故郷アルトゥシュなどウイグル文化がより根強く残る「南疆」地域で激しく行われてきたとされる。父親は2019年4月に解放され、連絡を取ることができたのは2022年に入ってからだった。
ただ、それは自宅を訪れた地元当局者からの着信を介してのビデオ通話だった。国家安全部の担当者を名乗る男は父親の姿を通話画面に写しながら、当時父親の拘束について証言していたケウセルさんに対し、「おまえがそんなことをやっているから、こんなことが起きるんだ」と言い放ったという。
ケウセルさんは2013年、高校進学のため渡米。現地で大学も卒業し、エンジニアとして働いてきた。年々悪化するウイグル弾圧の状況を受け、2016年を最後に一時帰国を取りやめた。以降、複数の親族が拘束された。
▽悲しみを詩で…
ケウセルさんによると、妹カミレさんはウイグル弾圧に関しても、悲しみや憤りを詩で表現してSNSに投稿するような繊細な女性だという。中国各地で起きた抗議活動を引き合いに「漢族ですら大勢の人が拘束されている。ずっと虐げられてきたウイグル族の妹はどうなってしまうのか」と顔をゆがめた。
ケウセルさんは1月22日、ツイッターに妹の解放を英語で訴えるビデオ動画を投稿した。中国当局が海外在住者のSNS投稿も監視しているとし、「まだ19歳の妹の身に起きたことを話すことで、中国政府に訴えかけるだけではなく、国際社会にも拡散したい」と願った。
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