
西日本新聞 2022/10/22
【北京・坂本信博】中国当局による不妊手術の強制など少数民族ウイグル族を狙った人口抑制策が懸念される新疆ウイグル自治区で、2021年の出生率(人口千人当たり)が6・16と過去最低を記録し、中国全土の平均(7・52)を4年連続で下回ったことが、中国政府の統計資料で分かった。中国では少子高齢化が加速しているが、前年には新疆だけ突出して不妊処置件数が約10万件も増えており、人口抑制策の影響がうかがわれる。
今年9月に刊行された国家統計局の22年版「中国統計年鑑」によると、新疆の21年の出生率は少子化が特に深刻な東北の3省や大都市の上海、天津両市などに続き、7番目に低かった。人口千人当たりの増加数を示す「人口増加率」(移住を除く)は0・56で、マイナスに近づいている。
卵管結紮(けっさつ)手術や子宮内避妊具(IUD)装着、人工妊娠中絶を含む不妊処置の地域別件数が記載されている中国衛生健康統計年鑑によると、20年の新疆での不妊処置件数は41万8656件で、前年から1・3倍に増えていた。
産児制限「一人っ子政策」の15年末の廃止に伴い、中国全体では16年から不妊処置件数が急減。20年に前年比で不妊処置件数が増えたのは全31省・自治区・直轄市のうち陝西省とチベット自治区と新疆だけで、新疆が突出して増えていた。
新疆を巡っては、ウイグル族の統制が強まったとされる14年以降に不妊処置件数が急増し、出生率が激減したことが中国の公式統計で明らかになっている。出生率の低下は、ウイグル族が人口の8割超を占める市県で特に顕著。中国政府は不妊処置について「住民の自主的な選択」と強調するが、現地に住んでいた複数の女性たちは西日本新聞の取材に対し、当局から不妊処置を強制されたことを証言している。
https://www.nishinippon.co.jp/item/n/1004334/