ウイグル弾圧「制度化進む」 資料分析の研究員、指導部関与「決定的」
- 2022/6/27
- ウイグル情勢
産経新聞 2022/6/27
中国新疆(しんきょう)ウイグル自治区での弾圧をめぐり、大量流出した地元公安当局の内部資料を分析した米非営利団体「共産主義犠牲者記念財団」(VOC)のアドリアン・ゼンツ上級研究員が27日までに産経新聞のインタビューに応じた。ゼンツ氏は、中国の習近平体制が「少数民族ウイグル族を集中収容して強制労働へ大量動員する段階から、これを長期的かつ持続可能なものに常態化させる段階に移行しようとしている」と警鐘を鳴らした。
ゼンツ氏は、中国政府が現在、大量の住民を強制的に収容所に送ったことで自治区の経済活動が低調になった影響を緩和するため、ウイグル政策を「より利益の出るものに転換させようとしている」とし、その一環として「洗脳された一部の人々を(当局の)監視の下で自宅に戻すこともしている」と指摘。ただし、こうした施策で弾圧が弱まったわけではなく、むしろ「弾圧の制度化」が進んで人権侵害行為が一層、巧妙化していると非難した。
ゼンツ氏はまた、多くの内部文書や写真を含む今回の流出資料によって、中国政府による大規模な弾圧がより明確になっただけではなく、習国家主席を含む指導部が直接的に関与していることが「決定的に証明された」と意義を強調した。中国共産党内では、上層部の方針に従って弾圧政策を遂行することが「出世や経済的な利益につながっていることは明らか」だとし、「党内で(弾圧に)抵抗するような動きはみられない」と述べた。
一方でゼンツ氏は、国連のバチェレ人権高等弁務官が5月、独立した検証作業や被害者との面談などが不可能な状況で自治区を視察訪問したことは「大きな誤りだった」とも強調した。バチェレ氏が中国訪問中に行った記者会見での説明は「完全に中国側の説明に沿ったもの」だったと失望感を表明。バチェレ氏が中国当局に、自治区で行方不明になっている人々に関する情報を家族に提供するよう要請などしたことは、「犯罪者に自身の犯罪を調べさせるようなものだ」と痛烈に批判した。(ワシントン 大内清)
ウイグル弾圧の内部資料大量流出 中国新疆ウイグル自治区のカシュガル地区とイリ・カザフ自治州の公安サーバーから、ハッキングによって内部資料が大量に流出し、米非営利団体「共産主義犠牲者記念財団」などが5月下旬、「新疆公安ファイル」として資料の分析結果を公表した。資料は中国が「職業技能教育訓練センター」と呼ぶ収容所などの実態を示す写真や2万3000人超の収容者名簿、約2900人分の顔写真、共産党幹部の発言記録など2017~18年頃の数万点。
https://www.sankei.com/article/20220627-XI4ANXQKN5JF7EATBKKKOEKFCI/