「ウイグル族弾圧はデマ」、個人装い「中国寄り」投稿拡散…日本標的に組織的情報工作か

読売新聞 2022/6/5

個人を装い、中国政府寄りの主張を英語などで不正に拡散させていたとして昨年、米ツイッター社が2160のアカウントを凍結し、その中の少なくとも45アカウントから日本語で発信されていたことが、読売新聞の調査でわかった。中国による新疆ウイグル自治区の少数民族弾圧を「デマ」だとする内容だった。同社は組織的な情報工作を指摘しており、日本が標的になっていることがうかがえる。

欧米諸国などは自治区でウイグル族が労働や不妊手術を強制されるなど、人権侵害を受けていると指摘しており、米国は昨年以降、「ジェノサイド(集団殺害)」と非難。これに対し、中国は「完全にデマだ」と主張している。

米ツイッター社は、複数のアカウントや偽のアカウントを使って情報を増幅する行為などを利用規約で禁止している。ウイグル問題に関する中国寄りの投稿について昨年12月、「国家的関与が疑われる」として規約違反でアカウントを凍結したと発表していた。

多言語で
読売新聞は、2160アカウントの凍結後、閲覧が停止された投稿とリツイート(転載)の計約6万7200件のデータの一部を同社から取得。内容を調べた結果、大半は英語で中国語やフランス語もあったが、日本語のものが少なくとも52件確認された。

発信元は45アカウントで、架空とみられる英語や中国語の個人名だった。

最も多かったのは、ウイグル族を名乗る人が出演し、人権侵害を否定する動画が添付された投稿のリツイート。投稿には動画の中での発言の日本語訳が記され、人権侵害を指摘した米CNNの報道について「記者が偽ニュースを作り出した」などとしていた。

中国政府系のメディアの日本語記事のリツイートも確認された。自治区の発展をアピールするシンポジウムで、出席者が「一部の勢力が事実を無視し、自治区の人々が美しい生活を享受する権利を中傷し、破壊しようとしている」などと発言する内容だった。

内容と日付同じ
こうした発信は内容と日付がほぼ同一で、31アカウントが4時間以内に同じような投稿をリツイートしたケースもあった。
時期は2021年1~3月に集中しており、春頃に凍結されたとみられる。

英語など他言語の投稿でも共通する特徴が見られた。「ウイグル問題は米国の戦略的陰謀だ」という中国の主張を紹介する政府系メディアの記事を投稿したり、中国の外交官の投稿をリツイートしたりしていた。

オーストラリア戦略政策研究所の報告書によると、アカウントは数百個が同じ日に開設されていたほか、他人から購入したとみられるものもあったという。

中国政府の関与は不明だが、同研究所は「中国が国際的批判をかわす目的で行っている」との見方を示し、「効果は限定的だが、今後、巧妙になっていく可能性がある」とする。

◆識者「国内問題介入に備えを」
国家に関係する組織が、SNSなどを舞台に自国に有利な情報を広め、他国の世論に影響を与えようとする手法は「影響力工作」と呼ばれる。近年、活発化しているとして欧米を中心に警戒感が高まっている。

個人の自発的な投稿を装う手口が巧妙化すれば、より懸念されるのは日本国内の問題への影響だ。2016年の米大統領選ではロシアが介入したとされる。20年の台湾総統選では、中国が偽情報の拡散に関与した可能性が指摘されている。

フランス軍事学校戦略研究所は昨年公表した報告書で、中国がすでに日本を工作対象にし、反米感情をあおろうとしていると言及している。

各国のプロパガンダに詳しい日本大の小谷賢教授は「SNSの情報工作が水面下で広がれば、気付かないうちに世論が誘導される危険がある。安全保障など賛否が分かれる問題に関し、他国が社会の分断を画策することが考えられる。国はツイッターやフェイスブックなどを運営するプラットフォーマーと連携し、工作を阻止できる体制の構築を急ぐべきだ」と指摘する。

https://www.yomiuri.co.jp/world/20220605-OYT1T50064/

在日ウイグル人証言録

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