西日本新聞 2022/5/12
【北京・坂本信博】中国新疆ウイグル自治区の少数民族が集まる地域で、人口千人当たりの増加数を示す「人口増加率」(移住を除く)が極端に低下している。地元当局の統計によると、ウイグル族が人口の9割超を占めるカシュガル地区では、2017年の30・42から19年は0・31に激減。ホータン地区も17年の11・8から19年は0・9に落ち込んだ。こうした地域では14~18年に不妊処置件数が急増しており、当局の関与が疑われているウイグル族を狙った人口抑制の実態が浮き彫りになった。
地元当局の統計資料「カシュガル地区統計年鑑」によると、19年に人口千人当たり1人も増えなかったことを意味する人口増加率「1未満」だったのはカシュガル、ホータン両地区で、いずれも18年以降に急減。特にカシュガル地区は17年の約100分の1に落ち込んだ。
新疆全体の統計年鑑では、19年分から地域別の人口データが非公開とされた。ウイグル族への人口抑制策の影響を読み取れなくする狙いがあった可能性があるが、同年鑑作成の基礎資料となるカシュガル地区統計年鑑には19年分までの地域別データが記載されていた。
カシュガル、ホータン両地区以外のウイグル族の集住地域もトルファン市が1・02、アクス地区1・48と、いずれも中国の平均(3・32)や新疆の平均(3・69)を大幅に下回った。漢族が人口の7割超の区都ウルムチ市(5・66)やカラマイ市(5・31)は、中国や新疆の平均を上回った。
ホータン地区の統計年鑑(13~17年分)では、人口の約97%を占める「その他の民族」(うちウイグル族が99%超)の人口増加率が年々下がる一方、人口の約3%の漢族は上昇している実態も判明。17年には漢族の増加率がその他の民族を上回る逆転現象が起きた。
産児制限「一人っ子政策」が15年に撤廃されたことに伴い、中国全体で16年から不妊手術や子宮内避妊具(IUD)装着手術が減少したが、新疆では当局による少数民族抑圧が強まった疑いがある14~18年に不妊処置件数が急増した。新疆統計年鑑によると、18年に不妊処置を受けていた人は新疆全体で約29万3千人に上り、約75%がウイグル族集住地域に集中。そのうち不妊手術は約8万9千人に上り、約99%がウイグル族の集住地域の住民だった。
自治区政府系の研究機関幹部は、新疆でウイグル族が増え続けて漢族との人口差が広がることの「政治的リスク」を問題視した論文を17年に発表。人口抑制策の実施を強く促してきた。
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