中国:ウイグルでのイスラム教徒迫害は人道に対する罪

アムネスティ・インターナショナル 2021/6/24

中国の新彊ウイグル自治区のウイグル人やカザフスタン人など、大多数がイスラム教徒である民族の人たちは、国家による大量投獄、拷問、迫害を受けている。これは人道に対する罪に相当する。

中国は、2017年以来、同自治区のイスラム教徒の宗教、文化、言語を消滅させるために手段を選ばない対応を取ってきたが、今回アムネスティが行った多数の元被拘禁者への聞き取りで、当局の常軌を逸した手口があらためて浮き彫りになった。

テロ対策の名目で行われている人権侵害の対象となってきたのは、ウイグル人、カザフスタン人、キルギス人、ウズベク人、タジク人などだ。

中国は、新彊ウイグル自治区全域に世界でも最も精巧とされる監視体制を敷き、実態は強制収容所である巨大な「再教育」施設群を作り上げている。施設内では、組織的に虐待や暴力行為が行われ、被収容者はあらゆる面で厳格に管理され、宗教色を排除した単一の中国人国家の考え方と共産党の理念を徹底的に植え付けられる。

そこには、新疆ウイグル自治区に中国政府が作り出した、地獄図絵さながらの巨大な暗黒世界があった。

ウイグル人やカザフスタン人などのイスラム系住民は、人道に対する罪にあたる行為や重大な人権侵害にさらされ、宗教的・文化的同一性を失う危機的な状況に置かれている。

大量投獄
2017年初頭から、同自治区のイスラム教を信仰する民族の男女多数が、当局に恣意的に拘束され、数十万人が強制収容所に入れられ、さらに数十万人が刑務所に送られてきた。

アムネスティは、過去に拘束された経験を持つ人たち50人以上に話を聞いた。いずれも、信仰に関わる写真の所持や国外との連絡など、違法とみなされるはずもない行為を理由に強制収容所で拘禁されていた。

2017年後半に大量逮捕に関わったことがある政府機関の元幹部の話では、警察は何の事前通告もなく各戸を訪れ、住人を連行し、法的手続きもなく彼らを施設に送り込んだ。

聞き取りをした人たちの証言によれば、ほとんどの人がまず取り調べを受けた。取り調べ中は、鉄製の椅子に座らされて手足を拘束され、頭部にフードをかけられ、その後、すし詰めの留置場に入れられる。生体認証データや医療データを取られた後、強制収容所送りになる。収容所への移送中も手足を拘束され、フードを被せられる。

強制収容所内では、被拘禁者は異常なほど厳しく管理され、自由もプライバシーも奪われる。私語は許されず、看守に少しでも口答えしたり、看守の問いに標準中国語ではなく母語で答えたりすると、厳しい懲罰を受ける。

起床は5時、ベッドを整頓し、その後、国旗掲揚、宣誓、食事、授業、夕食、授業、就寝など、日課は、事細かく決められている。食堂、教室、尋問室にいるときと移動以外は、監房内で過ごし、屋外に出て陽に当たったり運動したりすることは、ほとんどない。

収容所内の移動には武装した看守が付き添い、行動は、監視と評価の対象となる。最初の数週間から数カ月間は、一切の私語は認められず、監房内では、常に座位を強いられる。

数カ月後、通常は、標準中国語と中国共産党の教義を教え込まれる「教育」が始まる。「教育」は、イスラム教や彼らの言語、文化的習慣を否定することでもある。

政策としての暴力
アムネスティが話を聞いた人たちは全員、虐待や拷問を受けていた。

拷問には、殴打、電気ショック、独居拘禁、食事・水・睡眠のはく奪、器具を使った拘束、極寒の部屋での隔離などがある。丸1年も、手かせ足かせを付けられていた人、拷問を受けているところを見せ付けられた人、仲間の目の前で、椅子に拘束されたまま尿や便をもらすこと三日三晩、その後亡くなった人などもいたという。

拷問は身体的なものに限らない。日常の厳格な管理と監視の中で人間性を奪われる中、蓄積される心理的影響も深刻だ。

水も漏らさぬ監視体制
新疆ウイグル自治区のイスラム教徒の人たちは、収容所の中でも外でも、世界で最も厳しい国の監視下に置かれている人たちだ。

アムネスティが話を聞いた人たち全員が、解放された後も少なくとも数カ月間は、ほぼ常に機器や人による監視を受ける。中には、当局員に自宅に上がり込まれ、寝泊まりまでされて「不審な点がないか」を調べられた人もいる。不審な点とは、宗教行為、未認可の通信アプリの使用、普段以上の燃料や電力の使用などだ。

また、拘束後解放された人たちは、移動の自由を厳しく制限される。「コンビニ駐在所」と呼ばれるほど至る所にある検問所の警官が、街角を見回り、監視の目を光らせているためだ。

宗教的迫害
新疆ウイグル自治区のイスラム教徒は、信仰の自由を認められていない。多数のイスラム教徒がアムネスティに、「イスラム教を信仰していることに、当局は敵意をむき出しにする」と話す。宗教的・文化的慣習は、過激主義的とみなされ、拘束の対象になっている。

イスラム教式のあいさつは許されず、コーラン、礼拝用マットなど宗教に関わる物品を所持することも、事実上禁止されている。その結果、ほとんどの人は、イスラム教の信者とみなされないよう、お祈りをしたり信者とわかるものを身につけたりしなくなった。

アムネスティの聞き取りに応じた複数の当局元幹部は、「家々を訪れ、モスクの写真ほかイスラム関係の物品を没収する一方、中国の国旗を掲げるように指示した」と話した。

また、話を聞いた人たちによると、モスクや墓跡などの宗教的・文化的遺産が、自治区全域で取り壊され、別の施設に立て替えられたという。

大規模な隠蔽
中国政府は、新疆ウイグル自治区でのこうした国際人権法違反の行為の隠蔽に、異常なほど躍起になっている。当局から受けた扱いを口外した人物には、例外なく脅しや嫌がらせ、暴力を加え、拘束している。

拘束された市民数十万人の安否や居場所は、わからないままだ。その多くは、強制収容所に入れられ、他は、長期刑を言い渡されて収監されたり、強制労働に従事させされたりしているとみられる。

中国当局の公的数値を見ると、実刑判決の件数が大幅に増えていることがわかる。また、アムネスティが入手した衛星画像は、2017年以降に自治区内で相当数の刑務所が新設されたことを示している。

中国は、直ちに強制収容所を解体し、強制収容所・刑務所で拘禁されている人たちを解放し、自治区のイスラム教徒への弾圧をやめるべきだ。

国際社会は共に声を上げ、行動し、イスラム教徒に対する卑劣極まりない中国の政策を全面的に停止させなければならない。国際法上の罪が疑われる当局者の責任を問うことを視野に入れ、国連は、独立した専門家による調査の実施を決定し、早急に特別報告者を派遣しなければならない。

アムネスティ国際ニュース
2021年6月10日

https://www.amnesty.or.jp/news/2021/0624_9231.html

在日ウイグル人証言録

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