ウイグル弾圧 「教師」にされた女性の苦悩

産経新聞 2021.4.17

【ロンドン=板東和正】中国の新疆(しんきょう)ウイグル自治区の収容所で2018年春までの約5カ月間、収容者に中国語を教えることを強いられたカザフ族の女性が産経新聞のオンライン取材に応じた。収容所では中国共産党への忠誠をたたき込む授業が連日行われたほか、イスラム教の礼拝日を祝った収容者が性的暴行を受けたとも証言。「再教育」を名目にした人権侵害の実態が浮き彫りになった。

女性はサイラグリ・サウトバイさん(44)。現在はスウェーデンで亡命生活を送っている。

2016年から自治区イリ・カザフ自治州で幼稚園の運営責任者を務めていたが、17年11月に警察に呼び出されると、理由を説明されずに拘束された。黒い袋をかぶせられ、同州の収容所に車で連れて行かれた。

収容所では中国人民解放軍のものと似た迷彩服を着るよう命じられ、警察官に「お前は再教育施設で中国語の教師になるんだ」と言われた。「再教育施設での情報を漏らしたら死刑にする」「(他の収容者との)接触や私的な会話を禁じる」など中国語で書かれた誓約書に署名させられたという。

収容所には中国語ができない少数民族のウイグル族やカザフ族らが収容されていた。サイラグリさんは自身がウイグル語やカザフ語のほか、中国語も堪能だったことから「収容者に円滑に中国語を教えるために教師に選ばれた」と推察する。

「忠誠」教え、従順さを評価

収容所の約2メートル四方の居住房に1人で入れられ、他の中国語の教師と接触できなかった。

毎朝午前6時に起床し、7時~11時まで教室で男女の収容者約60人に中国語を教えた。「生徒」の収容者は番号で呼ばれ、手錠や足かせをつけて授業を受けた。サイラグリさんは「苦しい表情を浮かべて弱った収容者と直面し、ショックを受けた」と振り返る。

午前11時からは約1時間、中国共産党への忠誠を教える授業を行うことを命じられた。「習近平国家主席万歳」などの中国語のスローガンが書かれた紙を頭に乗せ、「生徒」とともに叫び続ける内容だった。

警察官2人が授業を常に監視し、「生徒」がどれだけ大きな声で数多く叫んだかを評価。授業中の従順さに応じて点数をつけ、「生徒」を管理の厳しさが異なる3つのグループに振り分けていたという。

信仰捨てたか試され

収容者がイスラム教の信仰を捨てたかどうかが試される出来事もあった。

18年1月のことだ。20代の女性収容者が100人以上の収容者の前で「金曜日の礼拝日を祝うメッセージを収容される前に携帯電話で友人に送った」と告白させられた。直後、複数の警察官はその女性に性的暴行を加えた。

その様子を見て怒りの表情を浮かべたり、直視しなかったりした収容者らは信仰を捨てていないと判断され、警察官に暴力を振るわれたという。その場にいたサイラグリさんは目を伏せずに見るしかなかった。

女性収容者への性的暴行は横行していたともいい、サイラグリさんは「中国当局は(収容所の)警察官に性的暴行を自由に加えられる権利を与えていた」との見方を示した。

収容所には警察官らが収容者を拷問する「黒い部屋」と呼ばれる約20平方メートルの部屋があった。監視カメラはなく、薄暗い室内に拷問器具が並べられていた。

信仰があつく、警察官らに従わない収容者らは黒い部屋に連れて行かれ、爪を全部はぎとられるなどされていた。全身血だらけで出てきた収容者もいたという。

サイラグリさんも一度、他の収容者との接触などを禁じる誓約書に違反したとを疑われ、黒い部屋で棒で殴られるなどして、気を失ったことがある。

18年3月に釈放され、自治区に隣接するカザフスタンに逃れた後、国連の助けを得て、夫と子供とともに19年6月にスウェーデンに渡った。

スウェーデンに入国後、英BBC放送などで収容所での経験を告白。サイラグリさんは「ウイグル族やカザフ族が中国に弾圧されている真実を世界に向けて告白するため、自治区から逃れてきた」と訴えている。

一方、中国外務省の趙立堅(ちょう・りつけん)報道官は昨年3月に、サイラグリさんについて「嘘をでっち上げた」と非難している。

https://www.sankei.com/world/news/210414/wor2104140025-n1.html

在日ウイグル人証言録

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