Human Rights Watch 2021/4/18
(ニューヨーク)― 中国政府は同国北西部の新疆自治区でウイグルその他のテュルク系ムスリムに対し人道に対する罪を犯していると、本日発表された報告書でヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。中国政府指導部は大量拘禁、拷問、文化的迫害などの広範で組織的な政策を実行している。責任者に制裁を科し、責任追及を進め、中国政府に方針を翻すよう迫るために国際的な協調行動が必須である。
「『血筋を絶やし、ルーツを絶やせ』:中国政府によるウイグル他テュルク系ムスリムを標的にした人道に対する罪(“‘Break Their Lineage, Break Their Roots’: China’s Crimes against Humanity Targeting Uyghurs and Other Turkic Muslims)」と題する報告書は53ページからなり、スタンフォード・ロースクールの人権・紛争解決実習クリニックの協力を得て作成された。中国政府の文書、人権団体、メディア、学者などから新たに入手できた情報に基づき、国際法の枠組みの中で新疆における中国政府の行動を検討評価する。本報告書は、ある地域の住人に対する広範または組織的な攻撃の一部として犯される犯罪に相当する、テュルク系ムスリムに対して行われている様々な人権侵害を明らかにしている。具体的には、大量の恣意的拘禁、拷問、強制失踪、大規模監視、文化と宗教の抹殺、家族の引き離し、中国への強制帰国、強制労働、性暴力、そして生殖に関する権利の侵害などである。
「中国政府当局はテュルク系ムスリムを、つまり人びとの生活や宗教や文化を、組織的に迫害してきた」とヒューマン・ライツ・ウォッチの中国局長、ソフィー・リチャードソンは述べた。「中国政府は『職業訓練』と『脱過激化』を提供していると主張してきたが、そんな美辞麗句を使っても人道に対する罪という残酷な現実を隠すことはできない。」
人道に対する罪は国際法の下でもっとも重大な人権侵害のひとつとされている。中国政府のテュルク系ムスリムに対する抑圧は新しい現象ではないが、近年で前例のないレベルにまで達している。大量拘禁とイスラム教の実践に対する徹底的な制限に加え、強制労働、広範な監視、子どもを家族から不法に引き離すことが行われていることを示す証拠が増えている。
「新疆のテュルク系ムスリム住民に対する中国政府の政策や手法が、国際刑法下の人道に対する罪の要件を満たしていることがますます明らかになっている」とスタンフォード人権・国際司法センターのファカルティ・アソシエイト、ベス・ヴァン・シャックは述べた。「政府が犯人を罰するどころか、この犯罪を止めようともしないことは、強力な国際的協調行動を取る必要を示している」。
ヒューマン・ライツ・ウォッチとスタンフォード・ロースクールの人権・紛争解決実習クリニックは、人権理事会に、犯されているとされる人道に対する罪を調査し、侵害行為を行った政府関係者を特定し、その責任追及に向けたロードマップを提示する権限を有する調査委員会(COI)を設立する決議を採択するよう求めた。国連人権高等弁務官事務所は調査結果を人権理事会と国連総会に報告し、テュルク系ムスリムに対する弾圧を止めるよう中国政府に圧力をかけるべきである。
関係各国政府は協調してビザ発禁措置と渡航禁止措置を取り、犯罪行為を行った当局に対する個別の対象限定型制裁を科すべきである。関係各国政府はまた、国外で犯された重大な犯罪の訴追を認める「普遍的管轄権」の概念の下、国内司法制度を使って刑事事件として訴追を行うべきである。さらに中国での強制労働の利用を終わらせるために貿易制限その他の措置を取るべきである。
「テュルク系ムスリムに対して中国政府が人道に対する罪を犯すのを止めるには、国際的な協調行動が必須であることはますます明らかである」とリチャードソンは述べた。「中国が強大な国家であることは、中国による過酷な人権侵害行為について中国政府の責任を問う重要性をいっそう高めている。」
https://www.hrw.org/ja/news/2021/04/19/378440