ウォルト・ディズニー社は2020年9月4日より、ディズニーの新作実写映画「ムーラン」を、動画配信サービス「ディズニー+(プラス)」で公開開始しました。そして、作中のエンドロールの中で、「中国共産党新疆ウイグル自治区宣伝部」、「トルファン地区党委宣伝部」、「トルファン地区公安局」、「カラ・ホージャ(高昌)区党委宣伝部」、「ピチャン(鄯善)県党委宣伝部」に対する謝意が記載されています。日本ウイグル協会はディズニー社に対して、深い悲しみと抗議を伝えます。
同地である東トルキスタンでは過去数年間で、300万人以上ものウイグル人や他の地元住民らが、中国で「再教育施設」と呼ばれる強制収容施設に収容され、著しい人道犯罪の犠牲になっています。「公安局」は逮捕や弾圧を、「党委宣伝部」とは中国のプロパガンダ政策をそれぞれ行う機関で、ウイグル人に対する人道犯罪とその隠蔽に最も責任のある機関なのです。そのため、今回の「ムーラン」の作品配信は、ディズニー社が中国共産党による東トルキスタンでのジェノサイドに、事実上加担していると解釈せざるをえません。
まして、ディズニー社が本社を置くアメリカでは、今年6月17日に習近平政権が東トルキスタンで行なっている人道犯罪に対処する最も効果的な措置として「ウイグル人権法」が成立し、7月9日には、新疆ウイグル自治の高官4人と新疆公安局に、資産凍結や米国査証の発給拒否といった制裁を科したばかりです。ディズニー社の国際的な人権問題への取り組みに対して、強い疑念を抱かざるをえません。
「ムーラン」は本来、南北朝時代の騎馬民族である鮮卑の王朝、北魏の民謡「木蘭辞」を原作とし、その内容はあくまで父と母を想う娘の優しい心を主題とするものです。ディズニーの「ムーラン」が中国共産党のプロパガンダに加担し利用されたとあっては、ディズニー作品を愛する世界中の人々に大きな失望と怒りと悲しみを与えるでしょう。
ディズニー社(日本の現地法人はウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社)にはこの問題に対して、以下の項目を要求します。
・「ムーラン」のスタッフロールに関する誠実なコメントの発表
・「ムーラン」のスタッフロールの修正
・今後のディズニー社における世界の人権問題に向けての取り組みの発表
・ウイグル人に対するジェノサイドの実行犯らを持ち上げた過ちを認め、ウイグルの人々への謝罪の発表
2020年9月13日
日本ウイグル協会
会長 于田 ケリム