【報告】日本ウイグル協会主催講演会「なぜウイグル民族は今の状況に落ちてしまったのか?」講師:エリキン・スデック博士/リシャット・アッバス博士
- 2019/3/19
- 活動報告
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日本ウイグル協会主催講演会
「なぜウイグル民族は今の状況に落ちてしまったのか?」
講師:エリキン・スデック博士/リシャット・アッバス博士
(文責 三浦小太郎)
3月17日、東京目黒の会議室にて、日本ウィグル協会主催講演会「なぜウイグル民族は今の状況に落ちてしまったのか?」が開催されました。
まず冒頭で、現在世界的に展開されている、Me Tooウイグル運動(#MeTooUyghur)が紹介され、日本在住のウイグル人たちが、講師のエリキン・スデック博士、リシャット・アッバス博士と共に、自分たちの家族、親族が故郷ウイグル(東トルキスタン)で受けている迫害を告発しました。日本ウイグル協会会長のイリハム・マハムティ氏も、家族・親族約12名が現在連絡が取れなくなっていることを報告しました。
続いて、まずエリキン・スデック博士が登壇、「文化的虐殺から物理的虐殺へ」というテーマで講演を始めました。
スデック博士は、現在の中国の面積の約6分の1がウイグル地域であることにまず触れ、チベット、南モンゴル、ウイグルの面積を合わせれば中国の約半分を占めることを指摘しました。その上で、現在中国政府はウイグルの人口を約1100万人と発表しているが、海外のウイグル人組織は、2000万人のウイグル人が生活していると考えている、ウイグルの正確な人口すら、今の中国では「国家機密」扱いなのだと述べました。
そして、ウイグル人は少なくとも2000年にわたる歴史を持ち、文化、経済、軍事の面でも輝かしい時代もあったが、かつて清帝国時代に中国人の侵略を受け、東トルキスタンの土地は勝手に「新疆」と新しく手に入れた土地という意味に改名されてしまったこと、しかし、ウイグル人は祖国の再建を目指して戦い続け、1933,1944年には、短期間とはいえ独立を果たした時期もあったと述べました。
ウイグルは貴重な地下資源に恵まれており、石油、ガス、石炭、特に石炭は中国全土の約40%が採掘されていること、しかしその豊かな資源はすべて中国政府に収奪されており、ウイグル人が自らの土地の資源を活用すれば豊かな国になることは確実なのに、実際のウイグル人は月の収入が12ドルという人も多いと指摘しました。
そして、今現在ウイグルで起きていることについて博士は説明。まず、中国政府の目的は、ウイグル人を消し去ることだと指摘、その為には以下の4つの手段が取られていると述べました。
(1)同化政策:宗教や民族の伝統文化の破壊。
(2)肉体的、精神的破壊。
(3)ウイグル人の人口増加を止める政策;これは、収容所における男性、女性の隔離政策や、15歳以上の女性に薬品を投与し、月経を停止させたという証言もあることを紹介しました。
(4)殺害:民族への組織的な大量虐殺、また突発的な殺害などを博士は指摘しました。
そして、現在、約300万人のウイグル人が、収容所、刑務所、もしくは孤児院に収容されている、また、小学校に通っていた子供たちも、寄宿生のように両親から切り離され、家に帰れなくなっていること、2017年までは祭りのときなどは民族衣装を着ることもできたが、それも現在は禁止されていることなど、博士は具体例を挙げて中国の弾圧政策を批判しました。
中国政府はこの収容所を職業訓練の場所と言っているが、実際には虐殺の場所であること、収容所は町や村から遠く離れたところに作られ、万が一脱走しても人家にはたどり着けないようになっている、収容所の隣には強制労働のための工場と、さらには火葬場までが設置されており。まさにウイグル人を隔離して殺害していく施設だと指摘しました。
パワーポイントで隠し撮りで撮影された収容所内の施設を紹介しながら、体験者の証言によれば、狭い部屋に訳40人から60人までの人間が詰め込まれ、眠る時も全員が横になれないので、3分の1か半分がまず眠り、数時間後に交代するしかない。そして、伝染病や皮膚病が不衛生な環境で蔓延していると、所内の悲惨な状況を訴えました。
そして、2009年、スデック博士が東トルキスタンを訪問した際、そこでたくさんの学生たちと、もちろん中国政府の許可を取ったうえで交流したのだが、その時の学生たちの多くが行方不明になっている、これはおそらく、自分と会ったことが「犯罪」とみなされたのだと述べました。今現在、中国政府は、収容の「ノルマ」を各地域に押し付けており、どんな理由であれ、決められた数の人数を政治犯収容所に送り込むよう命じられていると博士は指摘しました。
その収容の理由としては、国際的な人権団体、ヒューマンライツウオッチが、48個の実例を挙げており、中には、タバコを吸うことを拒否したこと、女性は民族衣装としてスカーフを着ること、ひげを伸ばすことなど、ほとんど何の罪でもないことが挙げられていると述べました。
そして、街には人影がなくなり、同時に中国人とウイグル人の結婚が事実上強制されている、中国人がウイグル人女性と結婚したいと言えば、それを拒否する権利はほとんどなく、ウイグルの男性は収容所に入れられ、女性が強制結婚を強いられていると述べました。
また、昨年、収容所から24時間だけ囚人を解放したことがあったが、その時に迷わずに家に帰ることができた人間は再び収容、家に戻ることもできなかった人間はそのままにしたという事件があり、これは、収容所内で薬物を投与する人体実験がされていた可能性があると博士は示唆しました。収容所内では拷問や暴力も日常的に行われ、ほとんど回復の見込みがないものは逆に釈放されてそのまま外で死亡するような状況が続いている、多くのウイグル人の死を無駄にしないためにも、このような真実を世界に伝えていかなければならないと博士は力説しました。
そして、なぜこのような残酷な弾圧と虐殺が行われているか、その理由を再び博士は6点にわたって指摘しました。(1)中国の文化は、他民族の文化、文明を認めない(2)中国の政治権力者は、歴史的に残虐な統治を行ってきている(3)中国はウイグルの地下資源は欲しいが、そこに住むウイグル人は必要としない(4)中国は今力をつけ、アメリカ以外のどの国に何を言われても平然と無視する(5)一帯一路政策のため、ウイグル人たちは邪魔な存在となっている(6)中国は今戦争を準備している。以上6点です。
中国の軍事専門家は、アメリカと中国が戦争状態に陥った時、アメリカはウイグル人を支援して中国を内部から攻撃するのではないかと考えており、その前にウイグル人を絶滅させようと考えている、それは、現在YOUTUBEにあがっている、南海大学における軍事専門家の次の言葉が露骨に証明していると述べました。「私たちの強みは経済でも国防力でもなく、膨大なる国土だ、私たちは歴史的に、周辺の諸民族を同化してきた、よい民族はどうか吸収し、悪しき民族は虐殺し消し去ってきた」
最後に博士は、日本人へのメッセージとお願いとして、(1)まず、中国政府の言うことは信じないでほしい(2)ウイグル人に対し今中国が行っているのは人類に対する犯罪であり、これを止めなければならない(3)中国が世界を支配することを止めなければ、この世界に地獄が訪れることを認識してほしい と述べ、講演を終えました。
続き、休憩をはさんでリシャット・アッバス博士が登壇。「アメリカにおけるウイグル問題へのリアクション」と題して講演を行いました。
まず博士は、この収容所は2016年に始まり、まず、最初に狙われたのはウイグルの著名な知識人たちであったこと、自分の妹も医者だったが、今は行方不明で連絡も取れないこと、現在では300数十名の知識人が収容され、ますます収容所は拡大している現状を述べました。
しかし、歴史の教訓によれば、どんな厳しい状況の中でも、最終的には真実が勝つことを私たちウイグル人は信じている、世界中のウイグル人は希望を持ちつつ、この困難を乗り越えていくしかないと、ウイグル人としての覚悟を述べました。
そして、自分たちウイグル人組織は、アメリカ議会に継続的に働きかけをしてきたこと、また、2018年3月には、世界同時行動としてウイグル人女性が中心となった抗議行動を行い、国際世論の喚起にも努めてきたことを述べました。
その成果もあり、2018年5月20日には、ワシントンポストが、「中国における新たなグラーグ(政治犯収容所)」という表現を使ってこの問題を取り上げ、他にも同様の報道が続いたこと、さらに、アメリカの当時の国連代表ケリー氏が、国際会議でウイグルの収容所問題を指摘し、公聴会や議会でいくつもの証言が続いたことをあげました。
そして、博士はこの問題に継続的に取り組んでくれているアメリカの国会議員は、マルコ・ルピオ議員とクリス・スミス議員であり、スミス議員は「世界最悪、最大規模の、ある民族をターゲットとした収容所問題」と指摘し、アメリカ議会は何度もトランプ政権に、中国に対してこの人権問題を理由に制裁をかけてほしいと求めていると指摘しました。また、ペンス副大統領は、ウイグルの収容所問題に言及するとともに、自国民を弾圧する政府は周辺諸国にも必ず攻撃を及ぼすと指摘し、中国の独裁体制の危険性をアピールしてくれたと述べました。
博士はアメリカ議会ではウイグルに対する法案が制定され、東トルキスタンの人権改善、信仰の自由、そして強制収容所の閉鎖を求めていること、日本もこれに続いてほしいことを述べました。
※参考情報
米議員が超党派で法案提出、中国にウイグル問題の説明求める:CNN
https://www.cnn.co.jp/usa/35128731.html
中国の少数民族ウイグル族に対する人権侵害が報告されている問題で、米連邦議会の超党派グループは15日までに、中国当局の責任を追及する法案を提出した。
上院の法案は共和党のマルコ・ルビオ議員と民主党のボブ・メネンデス議員が提出。下院では、共和党のクリス・スミス議員と民主党のトマス・スオジ議員が提出した。「新疆のトルコ系イスラム教徒に対する甚だしい人権侵害」を非難する内容で、「恣意的な拘束や拷問、中国内外のウイグル族への嫌がらせ」をやめるよう求めている。
そして、日本へのお願いとして、まず、日本政府は中国に対し、ウイグルで行っているこの犯罪行為を停止するよう求めてほしいこと、国連に働きかけて人権査察団をウイグルに派遣することを提起してほしいと述べました。そして、現在日本に在住しているウイグル人は約2000人いると思われるが、彼らはもう故郷に帰ることができない、帰ればその生命も危険にさらされる。また、留学生たちも、両親と連絡が途絶え、仕送りもなくなり、困窮している人も多い、彼等への滞在許可と、支援をお願いしたいと述べて講演を終えました。
その後質疑応答の後、司会のイリハム会長から、日本国民一人一人の力で日本政府を動かしてほしい、日本を護るためにもウイグル人への支援をお願いしたいという挨拶があり、約3時間の講演会は閉会しました(終)
※講演会の告知と講師のプロフィールはこちらのページをご覧ください
【2019年3月17日】日本ウイグル協会講演会「なぜウイグル民族は今の状況に落ちてしまったのか?」講師:エリキン・スデック博士/リシャット・アッバス博士
https://uyghur-j.org/japan/2019/03/jua_20190317/