東トルキスタンのウイグル人住民における優先的な人権問題 : 世界ウイグル会議


東トルキスタンのウイグル人住民における優先的な人権問題
2017年4月 | 世界ウイグル会議

 世界ウイグル会議(WUC)は、東トルキスタン・海外の双方におけるウイグル人の集団的利益を代表する国際団体です。WUCの原理的な目的はウイグル人のための民主主義、人権および自由の促進ならびに彼らの未来を決定づける平和的、非暴力および民主主義的手段の行使です。東トルキスタン・海外の双方におけるウイグル人の正当かつ唯一の組織としての役割を果たすべく、WUCは対話・交渉を通じての「東トルキスタン問題(the East Turkistan Question)」の平和的解決に向けた道筋を示すことに尽力しています。

 中国による東トルキスタンの占領に対する非暴力・平和的な反対運動および世界人権宣言中の国際的に認知されている人権基準の無条件の遵守をWUCは支援しています。WUCは民主主義的多元主義の原則を遵守するとともに政策手段としての全体主義、宗教的不寛容およびテロリズムを拒絶します。


優先的な人権問題:2017年4月

 東トルキスタンにおけるウイグル人共同体(新疆ウイグル自治区)に対して中国政府が行う人権侵害という観点からの最新の諸問題は以下のとおりです。以下は網羅的なものでは決してありませんが、発行時点(2017年4月)における東トルキスタンの現地状況に関する最新情報を提供するように努められたものです。


宗教的自由

 中国による極めて制限的な諸政策によってウイグル人住民の宗教的自由は長期間に亘って脅かされ続けています。中国政府は、宗教的実践を根絶しようとする明白な取り組みにおいて、ウイグル人の間での一切の宗教的行為に対する厳格な管理を維持し続けています。中国政府によって取られた最も重要な措置は「脱過激化に関する新疆ウイグル自治区規則(Xinjiang Uyghur Autonomous Region Regulation on De-extremification)」の成立です。東トルキスタンにおける宗教的自由をとりわけ規制・弾圧する既存の厳格な法律の上にこの諸規則が加重されています。この諸規則は宗教的実践を国家が許容する範囲のもののみへとさらに制限するとともに、日常行為と混在しているものを「過激主義」として維持・拡大しています。

 法律によれば「過激主義」の定義とは「[…]憎悪または差別の扇動および暴力の擁護を目的として宗教的な教えの歪曲や他の方法を用いる主張および行いのこと。」とされています。最近成立した「反テロリズム法(Anti-Terrorism Law)」と同様に、この諸規則における語法は曖昧かつ如何なる解釈も可能なままであり、その履行の責務を担う人々に多大な裁量の余地が残されています

 自身の信仰を実践したいと願うウイグル人との関連における「宗教的な教えの歪曲」とは結局のところ、「許容できる宗教活動」から逸脱すると国家がみなすものであれば何でもそれに該当する可能性があります。この「許容できる宗教活動」の範囲の縮減を目的として、中国政府はここ数年間に明白な措置を取っています。

 より詳細には、当該諸規則は禁止される素行または活動として以下等を定めています。

・「標準的でない髭」を蓄えていること
・他の民族または宗教を信じる人々に干渉または彼らと共生すること
・ハラル食の概念を一般化することおよび少しでもハラル的でないものを拒絶すること
・子供たちに伝統的なムスリム名を与えること
・「過激主義的な内容」をもつ情報または書類を保有、やり取りまたはそれらにアクセスすること
・強制的に他者を宗教的活動に参加せしめること
・「その他の言論」

 法律における正確な言葉遣い、およびその広範な解釈の余地、はまさに心配の種です。例えば、「過激的な内容」を含む書類に関して原文は「過激的な内容を含む記事、出版物、音声または映像の出版、印刷、配布、販売、製作、ダウンロード、保存、複製、アクセス、複写または所有。」と定め、それらは国家によってすべて違法とみなされます。実際には、自身のスマートフォンまたは他の端末機器で単にコンテンツを受領したに過ぎないウイグル人であっても法律に違反したことになります。
「標準的でない髭」または「過激性の象徴」の正確な意味を明確にしようとするものは他にはほぼ何も提供されていません。「その他の言論」という追加項目もまた法律の範囲を格段に広げています。


移動の自由

 自由な移動(国外、地域内および大都市内の近隣地区間の旅行までも含む)へのますます厳しくなる制限に対してウイグル人住民は苛立ち続けています。旅行に関する書類は数えきれないほどの検問所でチェックを受け、警察監視所は絶え間なく現れ、そしてあらゆる近隣地区はフェンスで効果的に囲まれています。

 ごく最近では、さもなければ中国国内の家族を拘束すると言って海外にいるウイグル人学生の帰国を強いることを目的として中国政府が広範なキャンペーンを展開している事実を示す報告がなされています。報告によれば、トルコ、エジプトや日本といった海外に居住する少なくとも300人のウイグル人学生がここ数カ月の間に中国当局から接触を受け、5月1日までに帰国するように圧力をかけられたということです。現時点において状況は流動的であり、WUCは事態の展開を注視し続けます。

 自由な移動に関するさらに直接的かつ広範囲に亘る制限が2016年10月19日に発表されました。それは地域内のすべてのパスポートは年次審査のために提出されなければならないというものであり、その時点からは警察がそれらを引き続き「保護預かり」することになります。国を離れたい人々は自身の地域政府当局からの承認を求めて申請しなければなりません。パスポートの回収を確認した役人たちは、その政策が地域内で徹底して遂行されていることもまた確認しました。

 検問所の大量増加や「簡易警察署」の導入に加えて既に大規模であった防犯カメラ・監視インフラの増設によって、移動や言動に対する制限・管理が引き続き行われています。新たに設立された警察署は既にチベットで使用されていたものを模範としたものであり、「グリッド式社会管理(grid-style social management)」と呼ばれ、市内の広範な地域を管理・監視する手段となっています。この警察署は最新の騒乱防止機器および場合によっては顔・声認証ソフトウェアを備えており、それらのソフトウェアは容疑者の追跡やプロファイル作成に用いられています。

 自由移動に対するより包括的な制限もまたパスポート・旅行書類の発行に関して課されてきています。ヒューマン・ライツ・ウオッチ(Human Rights Watch)が発行する報告書によれば、市民用に2層のパスポートシステムが2002年以来効果的に実施されてきていることを人権団体が明らかにしました。1つ目は国内の華僑多数派の人口が主に集中している地域に居住する人々用のものであり、2つ目は国内の少数派が圧倒的に集中する地域の人々用のものです。当該報告書は引き続いて次のように説明しています。「…緩速処理型の地域の人々は長期間の遅延を受けることとなり、時にはパスポートの発行に数年を要することがある。または何らの正当な理由なしにパスポートをいつも決まって拒絶される。」

 公式の書類によれば、ウイグル人、チベット仏教徒および回族(Hui Muslims)による宗教目的での旅行を阻止することを第一の目的として諸制限が課されました。他方、個々に旅行するよりもむしろ、国の認可を受けた旅行団体を通して市民は申請することができるということを国営メディアは伝えています。調査研究はまた、2006年にまで遡り、パスポートを更新・取得するウイグル人の権利が否定されるお決まりの方式を発見しました。2007年中華人民共和国パスポート法(The 2007 Passport Law of the People’s Republic of China)はパスポートが拒絶または没収され得る状況につき明確に規定してはいますが、特定の1つの民族集団からの一律的な没収は当該法律の範疇では明らかにありません。


対テロ活動

 2015年12月に成立した中国の対テロ法は、依然としてウイグル人住民に対する継続的な弾圧における憂慮すべき一面です。この制定法で定められている「テロリズム」や「宗教的過激主義」の広範かつ曖昧な定義は、宗教的信念の平和的な表現を犯罪化しよう、さらには高圧的な抑圧を合法化しようとする明白な試みです。中でも特に心配されるのは、いわゆる「テロ事件」に関する報道やインターネット上に拡散している情報に課される制限です。

 加えて、いずれのウイグル人およびジャーナリストによる「テロリスト事件」に関する報道を封じ込めようとする取り組みによって、正確な情報が国家統制メディアによる検閲を経た報道にすり替えられ続けられることが確実になっています。

 さらに、国家治安部隊に対する管理不足のせいで、2015年9月に起こった事案のような過度な戦力の行使が絶えることがない仕組みになっています。その事案においては、警察・治安部隊の対テロ作戦中に殺害された28名中11名は女性と子供であったと言われています。しかしながら、その集団全体が国営メディアによって「テロリスト集団」と表現されました。新しい法律によって、責任を問われることなく行動できる最大限の権限が治安部隊に与えられています。実際に、東トルキスタンの抑圧制度に批判的なウイグル人による反対・抗議活動に対処する治安部隊に対して、中国は訴追免責を効果的に付与しています。

 中国政府は、何年間にも亘って自身が行ってきた宗教的・文化的実践上の厳しい制限および移動の自由に対する制限を正当化するものとして、見せかけのテロリズムの脅威を利用してきました。
抵抗運動に関しては、平和的な政治活動家と暴力を擁護または行使する人々との間の区別がなされてきてはいません。


世界ウイグル会議
http://www.uyghurcongress.org/jp/