世界ウイグル会議第四回代表大会の報告-アジア自由民主連帯協議会講演会にて

当協会のイリハム会長が今回の世界ウイグル会議第四回代表大会の報告を、アジア自由民主連帯協議会の第三回講演会にて行いました。その内容を掲載致します。
動画などは協議会のページを御覧ください。http://freeasia2011.org/japan/archives/1292

世界ウイグル会議第四回代表大会の報告-アジア自由民主連帯協議会講演会にて

5月27日、東京都北沢タウンホールにてイリハム・マハムテイ(日本ウイグル協会代表)氏の講演会が、5月14日から17日までの、ここ日本における世界ウイグル会議開催の結果報告を兼ねて催されました。

まずイリハム氏は、今回の第4回世界ウイグル会議は、アジアにおける最大の民主主義国の日本の首都において会議が開催された歴史的意義を持つものであると述べました。そして、自分たちウイグル人はまず、日本に対し特別の愛情を持っていること、自分自身、子供のころ中国で日本軍と中国軍の戦争の映画などを見せられても、そのような映画ではほとんど中国軍が勝利するように描かれているのだけれど、ほんの一時でも日本軍が優勢になると、自分を含めウイグルの子供たちは何とも言えないうれしい気持ちになることがあったと述べました。

そして、このような感情だけではなく、ウイグルや諸民族の歴史を研究している人類学者などの論考を読むと、ウイグルも、トルコも、日本も、みなモンゴル高原にそのルーツを持つ民族で、そこから世界各地に旅立っていったと思われる、その一つの証拠として蒙古斑というのがこれらの民族の子供には皆表れていること、もう一つ、言語構造が根本的に似通っているウラル・アルタイ系の言語であることなど、日本民族とウイグル民族の根源的な近さがあるのではないかと述べました。そして、ウイグルの若者たちはどの国に海外留学したいかと問われれば、ほとんどが迷わずに日本に行きたいというだろうと、両民族の親近性を強調しました。

そして、今回の日本における世界ウイグル会議代表大会開催では、日本の国民の皆様、議員各位、そして日本政府、有識者などからの支援を広くいただいたことは、大会の参加者たちに、ウイグル会議の新しい出発点が東京から始まったという評価を得たと述べました。そして、日本のスタッフの緻密でルールをきちんと守った会議運営のやり方は、これまでのウイグル運動のいくつかの点を反省させるものでもあったと述べました。参加者は皆、直接関係のない日本人が、空港への出迎え、道案内、そのほかなぜここまで細やかな気遣いをしつつこの会議に協力してくれるのだろうと感動していたことに触れ、イリハム氏は参加者に、もちろん日本国民の人権意識の高さ、そして仕事の丁寧さや礼儀正しさもあるが、同様に、中国の覇権主義への脅威を深く自覚し、ウイグル問題に取り組むことは、日本そのものを守ることだという高い意識を持ってくれているからだと答えたと述べました。

そして、今回のウイグル会議の開会を日本の憲政会館で開催できたことに触れ、中国政府が、自分たちの世界ウイグル会議をテロ組織と誹謗してきたことに対し、日本の国会議員の方々の力で衆議院管轄の憲政会館という場で開催されたということは、このウイグル会議やウイグルの運動は、テロ組織ではないと日本の政治家の方々が世界に向けて発信してくれたことになる、これは今まで、中国の圧力に屈してきた世界各国に対しても、大きな衝撃を与えたことは、各紙や国際社会の報道でも明らかだと述べました。

そして、世界ウイグル会議代表大会の参加者が靖国神社を訪問し、その後、東トルキスタン共和国亡命者が葬られている多磨霊園を訪れたことに関して、中国側や一部の論者が靖国神社訪問を批判していることに対し、これは大会参加者が、自分たちの意志で行動したことであることだと述べました。元々ウイグル人の習慣として、他人の家を訪問する際にはその家のお墓参りをしますが、イリハム氏は、自分たちの考えでは、靖国神社とは日本国の為に命を捧げた方々が祭られているところであり、日本で多くの協力者の方々により世界ウイグル会議代表大会を開催出来たのだから、その日本国の英雄たちに敬意を表するのは当たり前のことだと判断すると語りました。そして、自分たちが靖国神社を訪れて非常に感動したのは、ここには何の差別も階級もなかったことであり、身分の差も貧富の差も関係なく、国のために命を捧げた人は皆同じように祭られていることだったと述べました。

自分たちウイグル人は、ウイグルのために戦った人たちを祭るところはどこにもない、改めて、国を失った自分たちの立場を思えば、このように自分の国を守って命を捧げた人々に敬意を表すのは当たり前だと思う、だからこそ、私たちはラビア・カーデイル氏を含めて全員で、堂々と靖国神社を訪問したと強調しました。そして、かつてアメリカで世界ウイグル会議が開催されたとき、参加者はアーリントン墓地に敬意を表した、それと全く同じことだと述べました。

その上でイリハム氏は、中国が今回ウイグル会議のメンバーが靖国を訪問したことを、第2次世界大戦の戦犯が祭られていることを問題にし、ウイグル会議が政治的意図があって靖国に行ったとか、中国人の心を傷つけたなどと言っているけれども、では、靖国神社にこれまで訪れた外国人はすべて政治的意図があったのか、中国が現実にウイグルを支配し、わが民族を弾圧していることに対して私たちが心から傷ついていることはどう思うのかを問いたいと述べました。

今回の会議で新しい指導体制が選出され、総裁に再選したラビア・カーデイルさんと櫻井よし子さんのシンポジウムも行われましたが、それも、これまでラビアさんがなかなか立場上言えなかったことも発言することができたいいシンポジウムだったとイリハム氏は評価し、尖閣諸島の問題について、国を失ったウイグル人の立場から発言させていただき、東京都が尖閣を購入する基金にもわずかながら寄付させていただいたことを報告しました。そして、ラビア氏がそのシンポジウムで、もしも自分たちの祖国が土地を買うことで取り戻せるのなら、私たちは世界中の人たちの善意の基金で買い戻してほしいと述べたところ、中国政府は翌日の新聞、特に新疆自治区のウイグル語の新聞で、ラビア氏の発言をゆがめたり、YOUTUBEにあげられた動画での発言を中国国内では観られないようにしたり、また悪意で改ざんしたりするなどして、ラビアは売国奴だ、という大キャンペーンを貼っている、このような情報操作で人々を対立させる手法は共産党政府がずっと行ってきたことだと述べました。

そして、イリハム氏は、今回での日本での成功を通じ、これまでの欧米に基盤を置いた運動だけではなく、わが東トルキスタンの地に近い中央アジア諸国での運動や情報の発信にももっと力を入れていくことが決定したとし、もちろん人権意識の高い欧米での活動は重要なのだけれど、自分たちの母国に近いここアジアでの運動を強化せずに欧米にのみ期待してはいけないと述べました。

イリハム氏は、この大会の成功は、同時に中国国内での弾圧の強化をもたらしているという厳しい情勢を報告し、今回の大会の参加者は、中国国内にいるすべての家族、友人に、中国政府から酷い脅迫があったようで、イリハム氏自身も、母親に電話したところ、これまでとは全く違う対応だった、ただ挨拶をしてあとは沈黙するだけだったと、苦しさを隠しながら述べました。そしてそれ以上に深刻なのは、ウイグル地域全体で、違法宗教活動への取り締まりキャンペーンというのが繰り広げられており、この5月20日、12歳の少年が、中国政府の言う違法な宗教指導者のもとで勉強したというので逮捕され、翌日、遺体で母親に返されたと弾圧の模様を報告しました。

その少年の遺体は、中国警察の側は自殺だと言っているが、全身に拷問の跡のような内出血があり、首には絞められた跡があったといいます。それなのに、警察は母親に対し、この自殺という発表に一切抗議しないという誓約書を書かせ、そのあとは何ら葬式も上げさせずそのまま遺体を埋めてしまったそうです。このことが明るみに出たのは、サウジアラビアに住むこの少年の父が公開したからであって、このように外国に親族がいないために事実を訴えることができない犠牲者とその家族がどれだけいるか分からないと、イリハム氏は苦渋に満ちた言葉で語りました。

そして、指導者であるラビア・カーデイル氏が現地に建てたビルも壊され、今監視体制下にある彼女の三人の子供たちも、眠ることも数日間許さないような訊問の後に、さらに環境の厳しい刑務所に移されていること、また、ここ日本に、中国の警察関係者が入国し、日本在住のウイグル人を脅迫して回る計画も進んでいるようだとイリハム氏は述べ、しかし、このような卑怯な行動しかとれないというのは、実は中国政府の弱さの表れなのだ、自分達ウイグル人には何ら隠し事はなく、事実のみを証言して抗議している、もしも事実と違うことがあるならば中国政府は堂々と反論すればいいのに、それができないというのは、正義が彼らの側にはないことを明らかにしていると述べました。

しかし、その上でイリハム氏は大変残念で疑問に思うこととして、鳩山元首相が、5月25日訪中時に、ウイグル問題は中国の内政問題である、と述べたことを挙げ、日本にも立派な政治家が自民党にも民主党にも多くいることはわかっているけれども、こうして中国の残酷な弾圧と、その危険性を訴えているさなかに、なぜこのような発言がされたのか、内政問題なら人権は問わなくていいのか、この元首相が何度も口にした、友愛精神というのはチベットやモンゴル、ウイグルには届かないものなのか、本当に自分はこの人に聞いてみたいと思ったと、日本の一部の政治家の不見識を強く指摘しました。

最期に、この代表大会の成功を経て、今後は日本を大きな活動拠点として、台湾、東南アジアにも運動を展開したいと考えている、その上で、皆さんの提言や、また方針への意見なども積極的にお聞きしたい、また皆さんがいろいろなネットワークなどをお持ちであり、自分が中国の弾圧の現実を訴える場が提供されるのであれば、積極的に行きたいと思う、それはウイグルのためだけではなく、全アジア、そして世界の民主化と平和のために役立つはずだと述べて講演を終えました。

その後、会場からも積極的な質問がなされ、最後にモンゴル自由連盟等のダイチン氏があいさつし、第3回のアジア自由民主連帯協議会主催講演会は無事閉会しました。

次回公演は、6月26日、協議会副会長石平氏の講演会となります。皆様のご参集をお願いいたします。
(文責:アジア自由民主連帯協議会 三浦小太郎)

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